Copilotのセキュリティは安全か|情報漏えいが起きる3ケースと導入前の設定

Copilotのセキュリティは安全か|情報漏えいが起きる3ケースと導入前の設定
目次

Microsoft 365 Copilot は、社員が普段アクセスできる SharePoint や Teams の情報だけを見て回答します。裏を返すと、共有範囲が広すぎるフォルダがあれば、その中身はそのまま回答に出てきます。

本記事では、Copilot のセキュリティを製品ごとの前提整理から始め、情報漏えいが起きる3つのケース、導入前に設定する項目、社内で運用ルールを整える手順までを、Microsoft 公式ドキュメントの記述に沿って整理します。

AI活用実態調査レポート

全国8,000人調査で、AI活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。

無料ダウンロード →

Copilotのセキュリティとは|何が守られ、何が守られないのか

Copilot のセキュリティが「提供元が仕組みで担保する領域」と「導入企業が設定で担保する領域」の2層に分かれていることを、左右の対比で一目で理解させる。読者が自社で手を動かすべき側がどちらかを判断できる状態にする。

Copilotのセキュリティとは、Microsoft 365の既存のアクセス権限とデータ保護をそのまま引き継ぐ設計のことです。Copilot が新しい保護の枠組みを持ち込むわけではなく、いま社内に設定されている権限とポリシーが、そのまま Copilot の回答範囲になります。この構造を理解すると、「Microsoft が担保している部分」と「自社の設定に委ねられている部分」がはっきり分かれます。

Microsoftが仕組みとして保証している範囲

Microsoft は、Copilot のプロンプトと応答に エンタープライズデータ保護(EDP) を適用しています。これは Microsoft 製品使用条件とデータ保護補遺に基づく契約上・技術的なコミットメントで、Exchange のメールや SharePoint のファイルと同じ条項が適用されるという位置づけです。

具体的には、保存時と転送中の暗号化、テナント間のデータ分離、GDPR や ISO/IEC 27018 への対応が含まれます。実務でもっとも問い合わせが多い学習利用についても、Microsoft Graph を通じてアクセスするプロンプト・応答・データは基盤モデルのトレーニングには使用されないと明記されています(出典: learn.microsoft.com)。

関連記事:Copilotに学習させない設定|製品別の手順とオフでも残るリスク

利用する企業側の設定に委ねられる範囲

一方で、Copilot は既存のアクセス許可とアクセス制御の内側で動作します。Microsoft の公式ドキュメントは、過剰共有または管理が不十分なコンテンツは Copilot の結果に影響を与え、リスクを高める可能性があると明示しています(出典: learn.microsoft.com)。

つまり「誰がどのファイルを見られるか」の設計は、導入企業の責任範囲です。全社共有になったままの人事関連フォルダや、退職者のアカウントに紐づいたままの共有リンクがあれば、Copilot はそれを正当な参照先として扱います。セキュリティ事故として表面化するのは、たいていこの側です。

Copilotは種類ごとにセキュリティの前提が違う

「Copilot」という名前の製品は複数あり、扱うデータの範囲も管理すべきポイントも異なります。自社で検討しているのがどれなのかを先に確定しないと、対策の議論がかみ合いません。下表は、企業でよく検討される4つの製品を、参照するデータ・学習利用・管理の要点で整理したものです。導入判断では、まず自社が使う製品の行だけを見れば足ります。

製品主に参照するデータ学習への利用管理の要点
Microsoft 365 Copilot自社のSharePoint・OneDrive・Teams・Exchange使われないアクセス権限の棚卸しが最重要
Microsoft 365 Copilot ChatWebが中心(組織データは限定的な経路のみ)使われない職場アカウントでのサインイン徹底
GitHub Copilot開発中のコードとリポジトリBusiness・Enterpriseでは使われないプラン選定とリポジトリ権限
Microsoft Security Copilotセキュリティ製品のシグナル該当なし(運用担当者向け製品)利用ロールの割り当て

とくに混同しやすいのが Microsoft 365 Copilot と Copilot Chat です。Copilot Chat はエンタープライズデータ保護が追加料金なしで利用でき、プロンプトと応答は Microsoft 365 のサービス境界内で処理されます。

ただし社内文書への広い接地はライセンス保有者に限られます。セマンティックインデックスを通じた完全な業務データへのアクセスは、Microsoft 365 Copilot ライセンスを持つユーザーのみが使えます(出典: learn.microsoft.com)。

関連記事:Copilotとは?基盤モデル・機能・仕組みからMicrosoft 365 Copilotの使い方・事例まで整理

Copilotで情報漏えいが起きる3つのケース

Copilot に関する情報漏えいは、製品の脆弱性より運用の穴から起きます。ここでは相談として持ち込まれることが多い3つの経路を、起き方と止め方の順に整理します。

ケース1|共有範囲が広すぎるファイルが回答に出てくる

共有範囲が広すぎるファイルが、AI 導入をきっかけに回答へ表面化する流れを Before / After の2段で示す。「権限は前から広かったが、探せなかったから問題にならなかった」という因果を読者に掴ませる。

もっとも件数が多いのがこの経路です。Copilot はユーザーがアクセスを許可されているデータにのみアクセスしますが、その「許可されている範囲」が実態より広いと、本人も知らないうちに機密文書が回答に混ざります。

よくあるのが、部門フォルダを「組織内のすべてのユーザー」で共有したまま放置しているケースです。人が手で探す前提の時代は、深い階層にあるファイルは事実上見つかりませんでした。Copilot は自然言語の質問から横断的に探し出すため、これまで運用でカバーされていた過剰な権限が一気に表面化します。対処は権限そのものの棚卸しで、Copilot 側の設定では解決できません。

AI活用実態調査レポート

全国8,000人調査で、AI活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。

無料ダウンロード →

ケース2|個人アカウントのAIに業務データを貼り付ける

会社が把握しないまま従業員が個人アカウントの生成 AI を使う状態は、シャドーAIと呼ばれます。Copilot の場合、職場アカウント(Microsoft Entra)と個人アカウント(Microsoft アカウント)は設計上区別されており、職場側で入力したデータが個人側に流れることはなく、その逆も同様です(出典: microsoft.com)。

問題は、アプリの見た目が近いために従業員が取り違えることです。判別には画面表示が使えます。Copilot Chat は、エンタープライズデータ保護が適用されていることを、新しいチャットボタンの横に表示される緑色のシールドで示します。社内周知では「盾のマークが出ている状態でだけ業務情報を入れる」と伝えるのが、もっとも短く確実な説明になります。

関連記事:シャドーAIとは?リスクと事例、禁止が逆効果になる理由と対策5ステップ

ケース3|取り込んだ文書に指示が仕込まれる

プロンプトインジェクションは、外部から届いたメールや文書に AI 向けの指示文を埋め込み、本来の指示を上書きさせる攻撃です。Copilot は受信メールや共有ファイルを参照するため、参照先の中身が攻撃の入口になり得ます。

Microsoft はエンタープライズデータ保護の一環として、有害なコンテンツやプロンプトインジェクションといった AI に焦点を当てたリスクからの保護を提供しています(出典: learn.microsoft.com)。ただしこれは万能の防壁ではなく、AI 事業者ガイドラインが繰り返し求めているとおり、人間による最終判断を残す運用が前提です。外部データを参照した回答をそのまま送信・実行させない手順を、業務フロー側に組み込む必要があります。

関連記事:生成AIで気をつけるセキュリティとは?主要リスクと企業がとるべき対策を解説

Copilotを安全に使うための導入ステップ

安全に使い始めるまでの作業を5段階の順序で示し、どこから着手すればよいかを迷わせない。とくに2番目の権限棚卸しが工数の山であることを視覚的に伝える。

ここまでのリスクは、導入前に手を打てば大半が塞がります。実際に情報システム部門が着手する順に5つのステップへ整理します。

ステップ1|どの製品を誰に配るかを決める

最初に決めるのは対象範囲です。全社員に一斉配布するのではなく、扱う情報の機微度が低い部署から始めると、権限の不備が表面化したときの影響を抑えられます。前掲の製品表を使い、対象者ごとにどの Copilot を割り当てるかを一覧にしておくと、後の権限設計とルール策定がぶれません。

ステップ2|SharePointとOneDriveの共有範囲を棚卸しする

Copilot 導入で工数の大半を占めるのがこの工程です。「組織内のすべてのユーザー」「リンクを知っている全員」で共有されているサイトとフォルダを洗い出し、必要な範囲まで絞り込みます。

Microsoft も過剰共有の修復を独立したテーマとして扱っており、SharePoint 高度な管理を使った準備手順を公開しています(出典: learn.microsoft.com)。作業量が読めない場合は、まず利用開始対象の部署が触るサイトに限定して着手すると進みます。

ステップ3|Microsoft Purviewで秘密度ラベルとDLPを設定する

Copilot は秘密度ラベルを継承し、保持ポリシーを適用します。機密度の高い文書にラベルを付けておけば、そのラベルに紐づく保護が Copilot の応答にも引き継がれます。

あわせて Microsoft Purview のデータ損失防止(DLP)ポリシー を設定し、データ流出を防ぎます。ラベルなしで DLP だけ入れても対象が定まらないため、ラベル設計を先に済ませる順番が効率的です。

ステップ4|監査ログとダッシュボードで使われ方を監視する

Copilot は対話の監査をサポートしており、Microsoft 365 管理センターには Copilot セキュリティダッシュボードが用意されています。ここでは DLP ポリシーによる漏えい防止、データの過剰共有の管理、データコンプライアンスの強化に関する情報とコントロールを確認できます。

表示にはグローバル閲覧者ロール、変更には AI 管理者ロールが必要です(出典: learn.microsoft.com)。導入直後の1か月は週次で確認し、想定外の参照が起きていないかを見る運用が現実的です。

ステップ5|利用ルールを配って現場に周知する

最後に、技術設定では止められない部分をルールで補います。入れてよい情報の線引き、生成物をそのまま外部へ出さない確認手順、盾のマークの見方の3点は、最低限そろえておきたい項目です。禁止事項だけを並べた文書は読まれないため、業務ごとの使ってよい例をセットで示すと定着します。

関連記事:生成AIの社内ガイドラインの作り方5ステップ|企業事例と項目一覧

Copilotの利用ルールと運用体制を整えた事例

技術設定を終えても、現場で使われる状態にするには運用側の整備が要ります。GiftX の調査でも、組織側の課題として挙がったのは制度と体制の不在でした。

組織のAI活用課題(複数回答)回答率
AI活用が個人任せになっている25.9%
学ぶ機会・研修制度がない20.6%
セキュリティ制限でツールが使えない19.6%
利用ルール・ガイドラインがない19.1%

個人側の課題でも「どこまでAI活用していいか判断できない」が27.7%で1位でした。セキュリティ設定と同じくらい、判断の拠り所を配ることが効きます。詳細な調査データは「ビジネス職生成AI活用実態調査(2026年版)」にてご覧ください。

生成AI利用ガイドラインを約3週間で策定した事例

GiftX が支援した企業では、業務での生成 AI 利用範囲・機密情報の取り扱い・成果物の検収基準を整理したガイドラインを AI 支援で策定しました。委員会形式で約3か月かかっていた策定期間が、約3週間まで短縮された計算になります。

効いたのは、部門別のユースケースと NG 例を具体化し、現場が迷わない粒度まで落とし込んだ点でした。AI が公開ガイドラインと社内ユースケースを整理して草案を作り、委員会はレビューと意思決定に集中する形に変えています。

社内ドキュメント検索を権限設計から立ち上げた事例

別の支援先では、規程・議事録・過去提案書を横断検索できる AI チャットを構築しました。資料探しに1回あたり約15分かかっていた状態から、約1分程度まで短縮されています。

このとき最初に手を付けたのが、Copilot 導入と同じく参照範囲の設計でした。どの文書を対象に含めるかを決める作業は、そのまま権限の棚卸しになります。Copilot を検討している段階でも、この工程だけは先に着手しておくと後戻りが減ります。

AI活用実態調査レポート

全国8,000人調査で、AI活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。

無料ダウンロード →

プロンプトを個人メモからチーム資産に移した例

GiftX 社内では、業務で使うプロンプトや定型フローを「スキル」として整備し、誰が実行しても同じ品質になる形で共有しています。個人メモに散在していた状態から、全員が同一フローを実行できる状態へ移し、新メンバーの立ち上げ期間が約50%短縮しました。

セキュリティの観点でも、この整備には効果があります。使ってよい手順が共有されていれば、各自が思いつきで機密情報を貼り付ける場面そのものが減るためです。

社内でAI活用を本格化するときに陥りがちな3つの落とし穴

セキュリティ設定を整えたあと、実際に業務へ組み込む段階でつまずく企業には共通点があります。

落とし穴1|いきなり全社・全業務に広げようとする

最初から全社員へ一斉に配布すると、権限の不備も教育の不足も同じタイミングで表面化し、どこから直せばよいか分からなくなります。対象部署と対象業務を絞れば、問題が起きても原因の切り分けが効きます。

落とし穴2|壮大なAI戦略から考えて手が止まる

全社のAI戦略を描いてから動こうとすると、関係部署との調整で検討が長期化し、いつまでも着手できません。先に決めるべきは全体像ではなく、どの1業務から始めるかです。

落とし穴3|既製品のチャット型AIでは業務フローに組み込めない

Copilot のような既製品のチャット型AIツールは、汎用性が高い一方で自社業務へのカスタマイズが難しく、業務フローに組み込めるレベルの質には届きにくい面があります。定型業務を任せきるには、自社の手順と判断基準を学習させた作りが要ります。

スモールスタートで1業務をAIエージェントに任せる

結論として、スモールスタートで1業務をAIエージェントで自動化・効率化することがポイントです。Copilot で全社の底上げを図りつつ、成果を出したい業務は専用のエージェントに任せる形が、セキュリティ面でも管理しやすくなります。GiftX では、こうしたスモールスタート前提のAIエージェント構築を1業務単位から伴走支援しています。詳細は AIエージェント構築支援サービス をご覧ください。

Copilotのセキュリティでよくある質問

検討段階で繰り返し出てくる質問を、公式ドキュメントの記述に沿って整理します。

Copilotに入力した内容はAIの学習に使われますか?

Microsoft 365 Copilot と Copilot Chat では、プロンプト・応答・Microsoft Graph を通じてアクセスするデータは基盤モデルのトレーニングには使用されません。GitHub Copilot も Business と Enterprise では顧客データをモデルのトレーニングに使用しません。一方、個人向けプランでは対話データがモデルの改善に使われる場合があり、サブスクライバー側でオプトアウトできます(出典: github.com)。

法人向けと個人向けでセキュリティに違いはありますか?

あります。職場アカウント(Microsoft Entra)でサインインした状態ではエンタープライズデータ保護が適用され、個人アカウント(Microsoft アカウント)とは設計上分離されています。両者の間でデータが行き来することはありません。

Copilotは自分が見られない資料まで参照しますか?

参照しません。Copilot はユーザーがアクセスを許可されているデータにのみアクセスします。想定外の資料が出てくる場合は、Copilot ではなく共有設定の側に原因があります。

CopilotのDLPとは何ですか?

Microsoft Purview のデータ損失防止機能を Copilot に適用したものです。指定した種類の情報が応答に含まれないよう制御し、データリークを防ぎます。設定と状況確認は Microsoft 365 管理センターの Copilot セキュリティダッシュボードから行います。

Copilotが参照するWeb検索も同じ保護の対象ですか?

別扱いです。応答の品質を上げるために Bing 検索サービスへ送られる Web 検索クエリは、プロンプトや応答とは異なるデータ処理が適用されます。クエリにはユーザーやテナントの識別子は含まれず、広告主とも共有されず、大規模言語モデルのトレーニングにも使用されません。ただし EU データ境界の対象外である点は、対象地域がある企業では確認が要ります(出典: learn.microsoft.com)。

従業員が個人アカウントで使うのを止められますか?

技術的な制御と周知の両方が要ります。管理設定で職場環境の利用範囲を定めたうえで、業務情報を入れてよいのは盾のマークが表示されている画面だけだと伝えるのが実務的です。全面禁止にすると把握できない利用へ回るため、使ってよい環境を提示する形が結果的に安全になります。

まとめ|Copilotのセキュリティは設定と運用で決まる

Copilot は既存の Microsoft 365 の権限とデータ保護をそのまま引き継ぐため、製品側の仕組みとしては企業利用に耐える保護が用意されています。プロンプトや応答が基盤モデルの学習に使われないことも公式に明記されています。

一方で、情報漏えいが起きる経路の大半は自社側の設定にあります。共有範囲が広すぎるファイル、個人アカウントとの取り違え、外部文書経由の指示混入の3つを想定し、権限の棚卸しから秘密度ラベルと DLP、監査ログの確認まで順に整えることが対策の実体です。

そのうえで、セキュリティ設定と同じ重みで効くのが利用ルールと運用体制でした。まずは対象を絞って始め、スモールスタートで1業務をAIエージェントで自動化・効率化することを起点に、社内での使い方を固めていくのが確実な進め方です。

Copilotの安全な社内活用をご検討の方へ

本記事で紹介したAIエージェントの活用に向けて、自社の業務でも具体的に進めたい・相談したいとお考えの方は、ぜひGiftX AIエージェント構築支援までお問い合わせください。

GiftX AIエージェント構築支援では、貴社の業務に合わせて1業務単位のスモールスタートから本番運用まで、AIエージェント構築をワンストップで支援します。ユースケースの洗い出しから、PoC、本番運用、社内ナレッジ化まで伴走します。

AI活用にご関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

GiftX AIエージェント構築支援の詳細・お問い合わせはこちら

関連記事

石塚 悠悟
AIエキスパート

GiftX共同代表。デロイト トーマツ/PwCでのコンサルティングを経て、ホットリンク執行役員として事業領域全体(デジタルマーケティング支援事業・SaaSプロダクト事業)・バックオフィス領域を統括。AI活用・業務自動化・エージェント構築の実務に注力。

SHARE
生成AI・AIエージェント
活用事例集

リサーチやデータ分析、提案資料・コンテンツ制作、顧客対応など、生成AIやAIエージェントの活用事例をまとめた資料を、無料でダウンロードできます。

無料ダウンロード →