生成AIは「使うのが当たり前」に|利用率と頻度で見る現在地
どれくらいの人が生成AIを使っているのか。オフィス系7職種の利用率は約67%です。全職種平均(事前調査ベース)の47%と比べると、デスクワーク中心の職種でAIが一段深く根づいています。実際、製造(29.0%)や物流(23.6%)などデスクワーク以外の職種は20%台にとどまり、ホワイトカラーとの差は最大で約3倍。生成AIは、まずデスクワークから浸透しています。
職種別に見ると、利用率の高い順は次のとおりです。
| 職種 | AI利用率 |
|---|---|
| エンジニア | 74.7% |
| マーケティング | 73.7% |
| 経営・経営企画 | 73.2% |
| カスタマーサクセス | 69.7% |
| 営業 | 62.4% |
| 管理部門 | 61.1% |
| デザイナー | 60.3% |
利用の頻度も高い水準です。AI利用者のうち、ほぼ毎日使う人が41.1%、週に数回が36.0%、月に数回が22.9%。毎日〜週数回の高頻度利用者が約77%を占めます。生成AIは「たまに試す」段階を越えて、日常業務のなかに定着しつつあります。
利用率は業種によっても差が大きく、IT・情報通信の74.8%に対し、公務・官公庁は18.2%と、最大で約4倍の開きがあります。
成果が「明確に上がった」のは約2割|普及と実感のギャップ
ところが、利用の広がりは、そのまま成果の実感につながっているわけではありません。
生産性について「向上を実感している(明確に上がった+やや上がった)」人は約7割います。ただし、「明確に上がった」と答えた人は19.4%にとどまります。成果・品質も同じ傾向で、「明確に上がった」は20.2%です。多くの人の実感は「やや上がった」どまりで、はっきりした成果には届いていません。
なお本調査の「明確に上がった」は、5段階評価の最上位のみを集計した数字です(「やや上がった」は含みません)。控えめに見積もった基準でも、はっきり成果を実感できている人は約2割、という結果です。
「使ってはいるが、効果は限定的」。この差はどこから来るのか。分かれ目は、AIの使い方の深さにあります。
AI活用の4レベル|7割が「チャット止まり」
本調査では、AIの使い方を「業務への組み込み度合い」で4つのレベルに分けて分析しました。ツールの利用有無ではなく、どこまで自分の業務に踏み込ませているかで整理する軸です。
- L1|チャットで質問:都度チャットで質問・相談・調べ物をする
- L2|チャットで作成:都度チャットで文章・資料・企画案などの成果物を作らせる
- L3|覚えさせて実行:自社の情報や業務手順を覚えさせ、繰り返し同じ品質で実行させる
- L4|AIエージェント化:AIエージェントが複数工程の業務を半自動〜自動で進める
全体の分布は次のとおりです。
| 活用レベル | 割合 |
|---|---|
| L1 チャットで質問 | 28.1% |
| L2 チャットで作成 | 42.2% |
| L3 覚えさせて実行 | 19.3% |
| L4 AIエージェント化 | 10.5% |
チャットで完結する使い方(L1+L2)に7割(70.3%)がとどまり、業務そのものをAIエージェント化しているL4は約1割(10.5%)です。多くの人にとって生成AIは、いまも「その都度、質問や作成を頼む相手」であり、「業務を任せる仕組み」には至っていません。
※AI活用レベルは「AIを業務にどう組み込んでいるか」を測る軸であり、AI活用の高度さ全般を示すものではありません(たとえばエンジニアの高度なコーディング支援などは、この軸には現れません)。
成果の分岐点は「AIエージェント化」|チャット止まりとの差は約3.8倍
この「深さ」が、成果を大きく左右します。レベル別に「生産性が明確に上がった」と答えた人の割合を並べると、差がはっきり表れます。
| 活用レベル | 生産性が明確に向上 | 成果・品質が明確に向上 |
|---|---|---|
| L1 チャットで質問 | 13.8% | 19.2% |
| L2 チャットで作成 | 14.5% | 16.3% |
| L3 覚えさせて実行 | 19.4% | 17.1% |
| L4 AIエージェント化 | 54.3% | 44.3% |
チャット止まり(L1+L2)の層で生産性が明確に向上した人は14.3%。L4の層では54.3%と、約3.8倍になります。成果・品質でも17.4%→44.3%(約2.5倍)、「AIがとても役立っている」という実感も26.2%→68.6%(約2.6倍)と、エージェント化層が大きく上回ります。
注目したいのは、L3(覚えさせて実行)の段階では成果がまだ大きく伸びていない点です。自社情報を学習させただけでは成果は割れやすく、L4で複数工程を任せる運用に踏み込んで、実感が大きく上がります。ツールの有無ではなく、業務にどこまで深く組み込み、育てているか。ここが成果の分かれ目です。
成果を分けるのは、レベル(深さ)だけではありません。AIを使う「業務の幅」も成果と関係します。一例として、マーケティングではAIを使う業務が5つ以上ある人の生産性明確向上が35.7%だったのに対し、4業務以下では4.2%でした(参考値・複数回答)。一つの業務を深く任せる(深さ)と、複数の業務に広げる(幅)。この両輪が回るほど、成果実感は高まります。
なお、これはクロス集計による相関であり、「AIエージェント化したから成果が出た」という因果を示すものではありません。ただ、成果を実感できている層ほど使い方が深い、という傾向ははっきり表れています。
職種で違う「到達度」と「つまずき方」
同じAIでも、職種によって到達しているレベルも、つまずく場所も異なります。利用率・生産性の明確向上・AIエージェント化(L4)率を職種で比べると、必ずしも足並みはそろいません(※各職種 n=69〜100。職種間の比較は業務の性質・成果の出やすさの違いを含むため、優劣として読むものではありません)。
目を引くのは、利用率と成果実感が一致しない点です。マーケティングは利用率2位(73.7%)ながら、生産性の明確向上は7職種で最下位(13%)。エンジニアは利用率トップ(74.7%)ながら、AIエージェント化率は5%と最も低い水準です。「よく使っている職種=成果が出ている職種」とは限りません。
何に使っているかも、職種で大きく異なります。
| 職種 | AIを最もよく使っている業務(上位) |
|---|---|
| 経営・経営企画 | 情報収集・リサーチ/社内資料/新規事業の壁打ち |
| 営業 | 提案・打合せ資料/社内資料/営業リスト作成 |
| マーケティング | データ分析/メール配信・シナリオ/制作物 |
| 管理部門 | 議事録/データ集計・分析/社内資料 |
| カスタマーサクセス | 問い合わせ対応/議事録/FAQ・ヘルプ |
| エンジニア | 社内資料/技術調査/コード生成 |
| デザイナー | アイデア出し/画像・イラスト生成/リサーチ |
つまずく場所も職種で違います。営業は「どこまでAIに任せてよいか判断できない」、マーケティングは「毎回の指示に手間がかかる・チャット止まりで自動化に進めない」、エンジニアは「利用は濃いがエージェント化がもっとも遅い」、デザイナーは「出力が実務でそのまま使えない」。詰まり方が分かれるため、一律の研修ではなく、職種ごとの型が必要になります。
使いこなしは役職でも差が出る|経営層ほど高度に活用
活用の差は、職種だけでなく役職にも表れます。利用率は一般社員42%、管理職69%、経営者・役員62%(※役職別は参考値)。役職が上がるほどAIを使っており、使い方のレベルも高くなります。
AIエージェント化(L4)に到達している割合は、経営者・役員が21%と、一般社員の8%の2倍以上です。判断業務が多く、AIに任せる範囲を自分で決められる立場ほど、高度な活用へ進んでいます。裏を返せば、AI活用は現場任せにしていては全社に広がりにくく、意思決定層が旗を振って進むテーマだといえます。
つまずきの正体は「個人任せ」|組織と個人の課題
では、なぜ多くの人がチャット止まりから抜け出せないのか。課題を個人・組織の両面から見ると、理由がはっきりします。
個人が感じている課題の上位は、「どこまでAI活用していいか判断できない」(27.7%)、「出力の質が実務でそのまま使えない」(27.4%)、「毎回の指示・調整に手間がかかる」(26.5%)、「進化が速くキャッチアップできない」(25.7%)。いずれも、チャットの限界に突き当たっている悩みです。
一方、組織側の課題として最も多かったのが**「AI活用が個人任せになっている」(25.9%)**でした。経営職に限ると37%まで上がります。個々人が工夫で使ってはいるものの、業務に組み込む仕組みや型、ナレッジが組織に蓄積されていません。ここが、チャット止まりから先へ進めない最大の理由です。
その裏返しとして、組織に足りないものには研修制度(20.6%)、業務に組み込む仕組み・専門人材(19.1%)、蓄積されたナレッジ(17.3%)が挙がります。いずれも「個人の頑張り」では埋まらない、組織側の仕組みに関わる不足です。
意欲が足りないわけではありません。「もっと活用したい」と答えた人は約6割(59.9%)います。足りないのは情熱ではなく、AIを業務に組み込む仕組みとナレッジのほうです。
成果につなげる進め方|「使う」から「育てる」へ
チャット止まりから抜け出し、成果を出している層に共通するのは、AIを「使う」から「育てる」へと運用を切り替えている点です。調査結果からは、次の3つの進め方が読み取れます。
- 業務を理解している人が設計に関わる:現場の業務手順を知る人がAIの使い方を設計することで、実務で使える出力に近づく
- 1つの業務から小さく始める:全社一斉ではなく、自職種の頻出業務ひとつをAIエージェント化の対象にする
- 走りながら改善する:一度で完成させようとせず、使いながら学習データと手順を整えていく
突き詰めると、成果を出している層に共通するのは2つの条件です。ひとつは①学習データの整備(自社の情報・業務手順を、AIが使える形に整えること)。もうひとつは②使いながら育てる(一度で完成を目指さず、改善を重ねること)。上の3つの進め方は、この2条件を現場で回すための段取りです。
実際、AIエージェント化(L4)に到達している層は、チャット止まりの層より「もっと積極的に活用したい」と答える割合が高く(72.9%対58.3%)、悩みの質も変わります。課題の1位は「毎回の指示・調整に手間」(32.9%)、次いで「時間が取れない」(30.0%)。使うかどうかの段階を越えて、「どう磨き込むか」に関心が移っています。成果は、導入した瞬間ではなく、育てた先に現れます。
まとめ
調査からわかったのは、次の3点です。
- 生成AIの利用率は約67%と定着したが、生産性が「明確に上がった」のは約2割にとどまる
- 差を分けるのはツールの有無ではなく使い方の深さで、チャット止まりからAIエージェント化(L4)へ進むと生産性の明確向上は約3.8倍になる
- 多くの職種・役職がチャット止まりで足踏みする最大の理由は「AI活用が個人任せ」で、必要なのは業務に組み込む仕組みとナレッジ
自社・自職種が今どのレベルにいて、次にどこへ進めばよいのか。それを客観的なデータで把握することが、成果につなげる第一歩になります。
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本記事で紹介した7職種のAI活用レベル・成果実感・つまずきの詳細データは、調査レポート「ビジネス職生成AI活用実態調査(2026年版)」にまとめています。自社・自職種の現在地を客観データで把握する資料としてご活用ください。
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