ChatGPTのセキュリティリスクとは|知っておくべき4つの危険性
ChatGPT のセキュリティリスクとは、入力した情報の漏洩や学習データへの利用、誤情報の生成、サイバー攻撃への悪用など、利用に伴って生じる危険性の総称です。代表的なリスクは次の 4 つに整理できます。
- 機密情報・個人情報の漏洩
- 入力データが AI の学習に使われる
- 誤情報・著作権侵害
- サイバー攻撃への悪用
いずれも「使い方しだいで避けられるリスク」であり、仕組みを理解すれば過度に恐れる必要はありません。まずは 4 つの中身を正しく押さえましょう。
機密情報・個人情報の漏洩リスク
ChatGPT に入力した内容は、OpenAI のサーバーに送信され、一定期間保存されます。社外秘の資料や顧客の個人情報をそのまま入力すると、社外にデータを持ち出したのと同じ状態になります。
また、アカウントの ID とパスワードが流出すると、過去のチャット履歴ごと第三者に閲覧される恐れがあります。入力内容そのものと、アカウント管理の両面に漏洩の入り口がある点を押さえておきましょう。
入力データがAIの学習に使われるリスク
個人向けプラン(無料版・Plus)では、初期設定のまま使うと入力内容がモデル改善のための学習データとして利用される場合があります。学習に取り込まれた情報が、将来ほかのユーザーへの回答に間接的に反映される可能性は否定できません。
この挙動は設定でオフにできます。具体的な手順は後述の個人向け対策で解説します。
誤情報・著作権侵害のリスク
ChatGPT は、事実と異なる内容をもっともらしく生成する「ハルシネーション」と呼ばれる現象を起こすことがあります。生成された回答を検証せずに社外向け資料へ転用すると、誤情報の発信につながります。
さらに、生成された文章や画像が既存の著作物に類似してしまう可能性もあります。生成物を公開する前に、内容の正確さと権利面の両方を人間が確認する運用が欠かせません。
関連記事:ハルシネーションとは?意味・原因・対策と生成AIを安全に使うコツ
サイバー攻撃への悪用リスク
攻撃者が ChatGPT を悪用し、フィッシング詐欺メールの文面やマルウェアのコードを効率的に作成する手口が指摘されています。生成 AI の普及で、攻撃メールの日本語が自然になり、見分けが難しくなったといわれています。
利用者側の直接のリスクとしては、外部サービスと連携した際に悪意ある指示文を紛れ込ませる「プロンプトインジェクション」と呼ばれる攻撃も知られています。プロンプト(AI への指示文)経由で意図しない動作を引き起こされないよう、連携先の信頼性確認が求められます。
ChatGPTに入力した情報はどう扱われるのか|学習の仕組みとデータの流れ
対策の意味を理解するには、入力したデータがどこへ流れ、どう使われるのかを知っておくと判断がぶれません。データの流れは「送信・保存」と「学習利用」の 2 段階に分けて考えます。
関連記事:ChatGPTの仕組みとは?生成AIの基本から学習方法までわかりやすく解説
入力内容はサーバーに保存され、学習に使われる場合がある
ChatGPT に入力したテキストは OpenAI のサーバーに送信され、サービス提供や不正利用の監視のために保存されます。個人向けプランでは「すべての人のためにモデルを改善する」設定がオンの場合、入力内容が学習データとして利用される対象になります(2026年6月時点、出典: openai.com)。
つまり「保存」はどのプランでも行われ、「学習利用」は設定とプランによって変わる、という二層構造です。
オプトアウトすれば学習利用を止められる
学習への利用は、設定画面から拒否(オプトアウト)できます。また、履歴を残さずに使える一時チャット機能を使えば、その会話は学習利用の対象外になります。
注意したいのは、オプトアウトしても入力内容のサーバー送信と一時的な保存自体は行われる点です。学習利用を止めることと、データを社外に出さないことは別問題として扱う必要があります。
OpenAI自身のセキュリティへの取り組みと限界
OpenAI は通信や保存データの暗号化、SOC 2 と呼ばれる第三者監査の枠組みへの対応、外部研究者から脆弱性の報告を受け付ける制度などのセキュリティ施策を公表しています(出典: openai.com)。サービス基盤としての防御は継続的に強化されています。
一方で、利用者が機密情報を入力してしまう運用上のミスや、アカウントの使い回しによる乗っ取りは、サービス側の対策ではカバーされません。リスクの多くは「利用者側のルールと設定」で決まると考えておきましょう。
実際に起きたChatGPTのセキュリティ事故事例
リスクを具体的にイメージするため、実際に公表・報道された事例を 3 つ紹介します。
チャット履歴の一部が他ユーザーに表示された不具合(2023年)
2023年3月、OpenAI はオープンソースライブラリの不具合により、一部ユーザーのチャット履歴のタイトルや、有料会員の決済関連情報の一部が他のユーザーに表示され得る状態になったことを公表しました(出典: openai.com)。サービス側の障害でも情報が露出し得ることを示した事例です。
従業員の入力による機密情報の持ち出し
2023年には、海外の大手製造業で従業員が開発中のソースコードや会議内容を ChatGPT に入力していたことが複数のメディアで報じられ、同社が社内利用を制限する事態になりました。悪意がなくても、日常業務の延長で機密情報が社外サーバーに渡ってしまう典型例といえます。
共有リンク経由で会話が閲覧可能になったケース
ChatGPT には会話を URL で共有する機能があります。過去には、共有リンクを作成した会話が検索エンジンから閲覧できる状態になっていたことが話題になり、機能の仕様が見直されました。便利な共有機能も、社外秘を含む会話では思わぬ公開につながる点に注意が必要です。
個人でできるChatGPTのセキュリティ対策と安全な使い方
ここからは具体的な対策です。まず個人アカウントで今日から実行できる 3 つの設定・ルールを押さえましょう。
学習へのデータ利用をオフにする設定
個人向けプランでは、設定メニューの「データコントロール」から「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、入力内容が学習に利用されなくなります(2026年6月時点、出典: openai.com)。
機密性の高い相談を単発で行う場合は、履歴に残らない一時チャットの利用も選択肢になります。設定は数分で完了するため、まず自分のアカウントの設定状態を確認することが、安全な利用の最初の一歩になります。
関連記事:Codexに学習させない設定とは?情報漏洩を防ぐデータ管理の手順を解説
入力してはいけない情報を決めておく
設定だけに頼らず、「そもそも入力しない情報」を自分の中で線引きしておくと安全度が上がります。具体的には次のような情報です。
- 氏名・住所・連絡先などの個人情報
- 社外秘の資料・未公開の経営情報
- 取引先から預かった情報
- パスワード・API キーなどの認証情報
どうしても文章の構造を借りたい場合は、固有名詞や数値を伏せ字やダミーに置き換えてから入力すると、漏洩リスクを大きく下げられます。
アカウントを多要素認証で保護する
チャット履歴には業務の文脈が蓄積されるため、アカウントの乗っ取りは情報漏洩に直結します。多要素認証(パスワードに加えて確認コード等を要求する仕組み)を有効化し、パスワードの使い回しを避けましょう。
あわせて、ChatGPT をかたる偽サイトや偽アプリにログイン情報を入力しないよう、公式の URL・公式ストアからのみアクセスする習慣も欠かせません。
企業に必要なChatGPTのセキュリティ対策
組織として ChatGPT を扱う場合は、個人の注意に任せるだけでは統制できません。ルール・運用・技術の 3 方向から対策を組み立てます。
利用ガイドラインの策定と従業員教育
最初に整えるべきは、入力禁止情報の定義、利用してよい業務範囲、生成物を社外に出す前の確認フローを明文化した利用ガイドラインです。経済産業省と総務省が公表している「AI事業者ガイドライン」も、ルール設計の参考になります(出典: meti.go.jp)。
ガイドラインは作って終わりではなく、研修や周知で「なぜ入力してはいけないのか」という理由まで浸透させることで初めて機能します。
関連記事:生成AIの社内ガイドラインの作り方5ステップ|企業事例と項目一覧
全面禁止ではなく、ルール整備で「シャドーAI」を防ぐ
リスクを恐れて全面禁止にすると、従業員が個人のスマートフォンや私用アカウントで無断利用する「シャドー AI」が生まれやすくなります。会社の管理が及ばない場所で機密情報が入力されるため、かえってリスクは高まります。
安全に使える公式の環境とルールを用意し、利用を可視化するほうが、結果として統制しやすくなります。禁止か許可かの二択ではなく、「安全に使える範囲を広げる」発想が現実解です。
DLPツールやログ管理で技術的に統制する
ルールと教育を補完するのが技術的な統制です。DLP(Data Loss Prevention、機密情報の外部送信を検知・遮断する仕組み)を導入すれば、個人情報や機密ファイルが生成 AI サービスへ送信されるのを自動で防げます。
あわせて、誰がどの AI サービスをどれだけ使っているかをログで把握できる体制を整えると、ガイドライン違反の早期発見や利用実態に合わせたルール改善につながります。
法人向けプラン・APIのセキュリティ比較
ChatGPT を業務で本格的に使うなら、個人向けプランのまま広げるのではなく、法人向けの選択肢を検討する段階に入ります。法人利用では、入力データが学習に使われないこと、メンバーやログを管理できることの 2 点が選定の軸になります。下表は、主要な利用形態を「学習利用・管理機能・想定ユーザー」の 3 観点で整理したものです(2026年6月時点、出典: openai.com)。
| 観点 | 無料版 / Plus(個人向け) | Team | Enterprise | API版 / Azure OpenAI Service |
|---|---|---|---|---|
| 入力データの学習利用 | 初期設定では利用される場合あり(オフ設定可) | 学習に利用されない | 学習に利用されない | 学習に利用されない |
| 管理機能 | なし | メンバー管理・ワークスペース | SSO・監査ログ・管理者制御 | 開発者側でアクセス制御を設計 |
| 想定ユーザー | 個人での試用 | 小規模チーム | 全社導入する企業 | 自社システムへの組み込み |
たとえば「まず一部のチームで安全に試したい」なら Team、自社の業務システムに AI を組み込みたいなら API版 や Microsoft が提供する Azure OpenAI Service が候補になります。Azure OpenAI Service は自社のクラウド環境内で利用でき、入力データがモデルの学習に使われない点が法人向けに評価されています。
セキュリティを整えてAI活用を始めるときに陥りがちな3つの落とし穴
セキュリティ対策を整えたうえで AI 活用を進める際にも、つまずきやすいパターンがあります。多くの企業に共通する 3 つの落とし穴を押さえておきましょう。
落とし穴1:いきなり全てをやろうとする
全部署・全業務への一斉導入から入ると、ルール整備や教育が追いつかず、リスク管理も定着も中途半端になります。対象範囲は意図的に絞るところから始めましょう。
落とし穴2:壮大なAI戦略から考えて手が止まる
完璧なセキュリティポリシーと全社 AI 戦略を作り込んでから始めようとすると、検討だけで数カ月が過ぎ、現場は何も変わらないままになりがちです。
落とし穴3:既製品のチャット型AIでは業務フローに組み込めない
汎用のチャット画面をそのまま渡すだけでは、自社の業務手順やデータに合わず、品質が業務で使えるレベルに届かないことが少なくありません。結局使われなくなり、効果検証もできずに終わります。
スモールスタートで1業務をAIエージェントに任せる
3 つの落とし穴を避ける共通解は、対象を 1 業務に絞り、セキュリティ要件を満たした環境でスモールスタートすることです。1 業務なら入力してよい情報の線引きも明確にでき、効果と安全性を両方検証しながら次の業務へ広げられます。GiftX では、こうしたスモールスタート前提のAIエージェント構築を 1 業務単位から伴走支援しています。詳細は AIエージェント構築支援サービス をご覧ください。
ChatGPTのセキュリティに関するよくある質問
最後に、ChatGPT のセキュリティについてよく聞かれる質問に端的に答えます。
ChatGPTは安全に利用できますか?
適切な設定とルールのもとであれば、業務でも安全に利用できます。学習へのデータ利用をオフにする、機密情報を入力しない、アカウントを多要素認証で守る、の 3 点を押さえることが前提です。組織で使う場合は、学習に利用されない法人向けプランの検討をおすすめします。
ChatGPTに入力してはいけない情報は何ですか?
個人情報、社外秘の資料や未公開の経営情報、取引先から預かった情報、パスワードや API キーなどの認証情報です。判断に迷う情報は「入力しない」に倒し、必要なら固有名詞や数値をダミーに置き換えてから使いましょう。
無料版と有料版でセキュリティに違いはありますか?
個人向けの無料版と Plus は、初期設定のままだと入力内容が学習に利用される場合があり、設定でオフにする必要があります。Team や Enterprise などの法人向けプランは、入力データが学習に使われず、管理機能も備わるため、組織利用での安全性が高い構成になっています。
まとめ|リスクを正しく理解してスモールスタートでAI活用へ
ChatGPT のセキュリティリスクは、情報漏洩・学習利用・誤情報や著作権・サイバー攻撃への悪用の 4 つに整理できます。いずれも仕組みを理解し、学習利用のオフ設定や入力ルール、ガイドラインと技術的統制を組み合わせれば、十分にコントロールできるものです。重要なのは、リスクを理由に立ち止まることではなく、安全に使える範囲を明確にして活用を前に進めることです。まずは 1 業務からのスモールスタートで、セキュリティと効果の両方を確かめながら AI 活用を広げていきましょう。
自社のAI活用を安全に進めたい方へ
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