AI開発会社とは|依頼できる範囲と4つのタイプ
AI開発会社とは、機械学習や生成AIを使った仕組みの企画から実装、運用までを請け負う企業のことです。同じ「AI開発」でも、担う範囲は会社によって大きく異なります。
依頼できる範囲は、おおむね次の4つに分かれます。
- 構想・企画:どの業務にAIを使うと効果が出るかを整理し、投資対効果を試算する
- 検証(PoC):PoC(Proof of Concept、実現可能性を小さく試す検証)で、狙った精度が出るかを確かめる
- 実装:モデルの学習と、既存システムへの組み込みまでを行う
- 運用・追加学習:稼働後の精度低下を監視し、新しいデータで学習し直す
このうちどこを外部に任せるかで、選ぶべき会社は変わります。構想段階から一緒に考えてほしいのか、要件が固まっていて実装だけを頼みたいのかで、適した相手が入れ替わるためです。
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4つのタイプと、それぞれが得意な案件
国内のAI開発会社は、成り立ちによって4つのタイプに整理できます。
| タイプ | 主な出自 | 強み | 弱くなりやすい点 |
|---|---|---|---|
| 総合コンサル・大手SIer型 | 経営コンサル、システムインテグレーター | 全社規模の構想から基幹システム連携まで一括で担える | 小規模案件は単価が合いにくい |
| AI専業テック型 | 研究者・大学発ベンチャー | 独自モデルやアルゴリズムなど難易度の高い技術課題に強い | 業務側の運用設計は別途必要になりやすい |
| データ活用・分析型 | データ分析会社 | データ基盤の整備と分析から入れる | 実装より前段の比重が大きい |
| 業務実装・伴走型 | 事業会社発、実装特化 | 1業務単位で小さく作り、使いながら直せる | 大規模な基幹刷新には向かない |
日本では、システムインテグレーターが要件定義から運用保守までを一括で請け負う商流が長く続いてきました。欧米では利用企業が自社でエンジニアを雇い、パッケージソフトを活用しながら自社開発するのが主流であり、この違いはAI開発の発注にもそのまま持ち込まれています。
自社にエンジニアがいない場合は一括請負が現実的な選択肢になりますが、その分だけ運用フェーズの依存度が高くなります。ここを踏まえずに「実績が多い会社」だけで選ぶと、稼働後に自社で手を入れられない状態が残ります。
得意領域は技術の種類でも分かれる
AI開発会社は、扱う技術の種類でも得意不得意が分かれます。画像認識で100件の実績がある会社に自然言語処理の案件を頼んでも、蓄積した学習データや評価のノウハウがそのまま活きるとは限らないためです。
- 画像認識・画像解析:外観検査、来店者の動線分析、医用画像の判定支援
- 自然言語処理・大規模言語モデル:文書の要約、社内文書の検索、問い合わせへの自動応答
- 需要予測・異常検知:在庫の最適化、設備の故障予兆の検出
- 生成AIの業務組み込み:既存の業務手順にAIを組み込み、複数工程をまとめて自動化する
自社の課題がどの技術に当たるかを先に決めておくと、実績を確認する軸がはっきりします。逆にここが曖昧なままだと、各社の提案が別々の前提で出てきて、比較しても優劣が判断できません。
AI開発会社の比較一覧|タイプ・得意領域・向いている案件
主要なAI開発会社を、タイプ別に整理したものが次の表です。知名度と対応範囲の広い会社から順に並べています。
| 会社名 | タイプ | 得意領域 | 向いている案件 |
|---|---|---|---|
| アクセンチュア | 総合コンサル | 戦略立案、データ基盤、全社展開 | 全社規模でAIの使いどころから設計したい |
| NTTデータ | 大手SIer | 基幹システム連携、AIガバナンス、品質保証 | 既存の基幹システムとつなぐ必要がある |
| Preferred Networks | AI専業テック | 独自の大規模言語モデル、AI半導体、計算基盤 | 難易度の高い技術課題を共同で解きたい |
| PKSHA Technology | AI専業テック | 自然言語処理、対話AI、AI SaaS | 問い合わせ対応をAIで置き換えたい |
| エクサウィザーズ | AI専業テック | 生成AIの企業向けプロダクト、医療・介護領域 | 特定業界に踏み込んだAIを作りたい |
| ABEJA | データ活用・実装 | AI基盤の提供、AIガバナンス、店舗解析 | 内製化を見据えて基盤ごと整えたい |
| ブレインパッド | データ活用・分析 | データ基盤整備、分析、人材育成 | データが散らばっていて分析から始めたい |
| Laboro.AI | 業務実装 | オーダーメイドのカスタムAI開発 | 既製品では合わず、専用に作りたい |
| ELYZA | AI専業テック | 日本語の大規模言語モデル、独自LLM開発 | 日本語の精度が成否を分ける |
| GiftX | 業務実装・伴走 | 1業務単位のAIエージェント構築 | まず1業務だけ自動化して効果を確かめたい |
表のとおり、同じ「AI開発会社」でも入り口がまったく違います。以降では各社の特徴を1社ずつ見ていきます。
関連記事:AIエージェント導入支援会社のおすすめ11選|選び方と対応領域を整理
アクセンチュア株式会社|AI導入の戦略立案から全社展開までを一括で担う
アクセンチュアは、経営戦略のコンサルティングからシステム実装、運用までを一貫して提供する総合コンサルティング会社です。日本法人でも、生成AIを含む複数のAIエンジンを企業固有のデータやシステムとつなぐ「Accenture AI HUB Platform」や、企業全体でAIを広げるための基盤「AI Refinery」を提供しています。
同社は、生成AIの活用で最大の課題になるのはデータの準備だとして、モデルそのものより手前のデータ基盤への投資を重視する立場を取っています。業務知見を組み込んだ業務適用型のAIサービス群や、価値の創造とリスク回避を両立させる「責任あるAI」の実践支援も併せて提供しており、AIの導入とセットで従業員の再教育や組織の再編まで扱う点が特徴です。
向いているのは、特定の1業務ではなく全社規模でAIの使いどころを設計したい企業です。一方で、案件規模が小さいと単価が合いにくく、まず小さく試したい段階では体制が過剰になりやすい面もあります。
株式会社NTTデータ|システム開発の知見を活かした基幹連携とAIガバナンス
NTTデータは、国内最大手のシステムインテグレーターです。AI領域では、データとインテリジェンスの戦略立案、データマネジメント、データにもとづく意思決定の仕組みづくり、機械学習の実装、データとAIのガバナンス、データアーキテクチャ、数理コンサルティングという7つの領域をそろえています。
特徴は、AIガバナンスと品質保証に比重を置いている点です。モデルを作って終わりではなく、稼働後に品質を保つ基準や体制まで含めて設計する構えを取っています。数理コンサルティングでは機械学習にとどまらず最適化や統計解析まで扱うため、需要予測や配置計画のように数理モデルが中心になる課題も相談できます。長年の受託開発で積み上げた基幹システムの知見があるため、既存の業務システムとつなぐ必要がある案件と相性のよい会社です。
向いているのは、既存の基幹システムと連携させる必要があり、稼働後の品質保証まで含めて任せたい企業です。
株式会社Preferred Networks|機械学習の研究開発から計算基盤まで自社で持つ
Preferred Networks は2014年3月に設立された、国内でも有数のAI技術企業です。半導体や計算インフラからソリューション、アプリケーションまでを自社で垂直統合している点が、他のAI開発会社と大きく異なります。
日本語性能の高い国産の大規模言語モデル「PLaMo」や、神戸大学と共同開発したAI向けプロセッサー「MN-Core」シリーズを自社で開発しています。自社開発のスーパーコンピュータ「MN-3」は、消費電力あたりの性能を競うランキングで世界1位を3度獲得しています。
対象領域は製造業、素材・化学品、ライフサイエンス、エンターテインメント、小売・流通、金融、公共サービス、教育と幅広く、株主にはSBIグループ、NTT、トヨタ自動車、日立製作所、三菱商事、ファナック、中外製薬といった企業が名を連ねています。
向いているのは、既存の技術では解けない課題を共同研究に近い形で進めたい企業です。一般的な業務システムへの組み込みを頼む相手というより、技術そのものが競争力になる領域のパートナーと考えるほうが実態に近いでしょう。
全国8,000人調査で、AI活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。
株式会社PKSHA Technology|自然言語処理と対話AIを製品まで作り込む
PKSHA Technology は2012年10月に設立され、東京証券取引所プライム市場に上場しています(証券コード3993)。東京大学の松尾豊研究室出身のメンバーが創業した会社で、自然言語処理、画像認識、機械学習と深層学習を使ったアルゴリズムの開発と提供を事業の中心に据えています。
受託開発だけでなく、「AI Contact Center」「AI Agents Platform」「PKSHA LLMS」「AI Security」といった自社製品を持っている点が特徴です。小売・流通、自動車・都市開発、信販・銀行、保険、教育、医療・ヘルスケアといった業界ごとにソリューションを用意しており、同種の課題を持つ企業の導入実績が積み上がっています。研究部門を社内に持ち、製品への反映まで一続きにしている構造も、受託専業の会社との違いです。
向いているのは、問い合わせ対応や社内の照会業務をAIで置き換えたい企業です。ゼロから作るより、実績のある製品を土台にして自社向けに調整するほうが早く立ち上がります。
株式会社エクサウィザーズ|生成AIの業界特化プロダクトを持つ実装型
エクサウィザーズは2016年2月に設立され、東京証券取引所グロース市場に上場しています(証券コード4259)。AIを使ったサービス開発によって産業の変革と社会課題の解決を進めることを掲げている会社です。
企業向けの生成AIプロダクト群「exaBase」シリーズのほか、認知症対策など医療・介護領域に踏み込んだ「CareWiz」シリーズ、対話解析の「CogniTalk」、オンライン診療支援の「Dr.Tel」などを展開しています。注力領域を企業向けAI、ヘルスケア、商談支援の3つに置いており、汎用的なAI開発にとどまらず特定業界の現場に合わせたプロダクトを自社で持っている点が特徴です。
向いているのは、業界特有の制約や規制がある領域で、汎用ツールでは精度が出ない課題を抱えている企業です。すでに近い領域のプロダクトがあれば、その分だけ開発期間を短縮できる可能性があります。
株式会社ABEJA|AI導入の基盤づくりから内製化まで見据える
ABEJA は2012年9月に設立され、2023年6月13日に東京証券取引所グロース市場へ上場しました(証券コード5574)。AIの実装を支えるプラットフォーム「ABEJA Platform」を基盤に、企業のデジタル化を総合的に支援しています。
大規模言語モデルを使った「ABEJA LLM Series」、AIガバナンスのコンサルティング、AIを扱える人材の育成支援、小売向けの店舗解析サービス「Insight for Retail」をそろえています。開発を請け負うだけでなく、発注側が自分たちで運用を回せる状態に近づけるための人材育成まで扱う点が特徴で、公平性に配慮したAIの実装を掲げている点も同社の立ち位置を表しています。
向いているのは、いずれ内製化したいが今は自社に体制がなく、基盤と人材を並行して整えたい企業です。反対に、単発で1つの仕組みだけ作りたい場合は、提供範囲が広すぎて費用が見合わないこともあります。
株式会社ブレインパッド|データ分析と基盤整備から入れる老舗
ブレインパッドは2004年に設立された、データ活用支援の草分けと言える会社です。企業のデータ活用を設計して業務に組み込むプロフェッショナルサービスと、SaaS形式でデータ活用を日常業務に定着させるプロダクトの2本柱で事業を展開しています。プロダクト側にはレコメンドや配信の最適化を担う「Rtoaster」、映像を扱うAIエージェント「COROKO」などがあり、分析だけでなく実装まで手掛けています。
発注前に必ず押さえておきたいのが、体制の変化です。同社は富士通による株式公開買付けを経て完全子会社となり、2026年3月17日付で東京証券取引所プライム市場から上場廃止となりました。事業そのものは継続していますが、資本関係と意思決定の構造は上場していた時期と変わっています。
向いているのは、データが部門ごとに散らばっていて、まず分析できる状態に整えるところから始めたい企業です。AIモデルを作る前段に課題がある場合、この順序で入れる会社は選択肢が限られます。
株式会社Laboro.AI|課題解決に合わせてオーダーメイドでAIを作る
Laboro.AI は2016年4月に設立され、2023年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました(証券コード5586)。機械学習を使ったオーダーメイド型のAI、同社の言葉では「カスタムAI」の開発と、その導入に向けたコンサルティングを事業としています。
既製のAI製品を導入するのではなく、個社の課題に合わせて設計から作る点が明確な特徴です。従業員数は114名(2026年3月末時点)と、大手SIerに比べれば小回りの利く規模で、要件が固まりきっていない段階から一緒に整理していく進め方を取っています。コンサルティングと開発を同じ会社が担うため、構想と実装の間で認識がずれにくい構造になっています。
向いているのは、既存のパッケージやSaaSでは自社の業務に合わず、専用に作る必要があると判断している企業です。反対に、汎用製品で足りる要件であれば、オーダーメイドはコスト面で不利になります。
株式会社ELYZA|日本語に特化した自然言語処理と大規模言語モデル
ELYZA は、東京大学の松尾豊研究室のメンバーが立ち上げたAI企業です。2019年から大規模言語モデルの研究開発に継続して投資しており、2024年3月には日本語性能が海外の主要モデルに匹敵する700億パラメータのモデルを開発しました。
2024年3月にKDDIグループと資本業務提携を結び、同年4月にKDDIの連結子会社となっています。KDDIが43.4%、KDDI Digital Divergence が10.0%の株式を保有する体制です。企業独自の大規模言語モデルの開発支援、日本語に特化した領域別モデルの開発、生成AIを使った業務改善の支援を手がけており、金融や人材といった業界で事業を展開しています。
向いているのは、日本語の読み取り精度や表現の自然さが成果を左右する案件です。海外製のモデルをそのまま使うと精度が届かない、社内文書の扱いに独自の要件があるといった場合に検討の価値があります。
株式会社GiftX|AI導入を1業務単位から始めて使いながら育てる
GiftX は、AIエージェントの構築を1業務単位で支援している会社です。全社規模の構想から入るのではなく、まず1つの業務を選んで自動化し、効果を確かめてから範囲を広げる進め方を取っています。
特徴は、自社事業で同じ仕組みを実際に回している点です。記事制作では、キーワードを渡すだけで調査から構成、執筆、画像作成、入稿までをAIエージェントが一気通貫で実行し、1記事あたり約4時間かかっていた工数を約10分(約96%削減)まで短縮しました。ランディングページの制作でも、構成とコピー、デザインの生成を自動化し、制作期間を約14日から約2日(約86%短縮)にしています。
人が担うのはレビューと最終承認だけという形に業務そのものを組み替えている点が、ツールを導入するだけの支援との違いです。
向いているのは、大がかりな計画を立てる前に、まず1業務で成果を確かめたい企業です。既製のチャット型AIツールでは業務フローに組み込めなかった、という段階から相談できます。
AI開発会社に依頼する費用相場と見積もりの内訳
AI開発の費用は、フェーズごとに分けて考えると見通しが立ちます。次の表は、公開されている見積もり例から整理した目安です(2026年8月時点の一般的なレンジで、要件とデータの整い方によって大きく変動します)。
| フェーズ | 費用の目安 | 期間の目安 | 主な作業 |
|---|---|---|---|
| 構想・要件定義 | 40万〜200万円 | 2週間〜1か月 | 業務課題の整理、投資対効果の試算 |
| PoC(検証) | 100万〜500万円 | 1〜2か月 | 学習データの準備、精度が出るかの検証 |
| 本開発 | 300万円〜数千万円 | 3〜6か月 | モデルの学習、既存システムへの組み込み |
| 運用・保守 | 月5万〜200万円 | 継続 | 精度の監視、追加学習、改善 |
規模で見ると、問い合わせ対応の自動化のような小規模な開発で50万〜300万円、需要予測や異常検知のような中規模で300万〜1,000万円、全社のデータ基盤とあわせて構築する大規模案件で1,000万〜5,000万円以上が目安になります(いずれも2026年8月時点の目安です)。本開発の見積もりは、多くの場合エンジニアの人月単価を基礎に積み上げられるため、参画する人数と期間が分かれば妥当性をある程度検算できます。
見積もりで見落とされやすいのが、学習データの整備にかかる費用です。自社のデータが整理されていない場合、データの収集とラベル付けだけで数十万円から数百万円が別途かかることがあります。相見積もりを取るときは、この作業がどちらの負担になっているかを必ず確認してください。同じ金額でも、データ整備が含まれているかどうかで実質的な負担はまったく変わります。
もう1つ見落とされやすいのが、運用・保守が継続費用である点です。AIは一度作れば終わりではなく、扱うデータの傾向が変わると精度が落ちていきます。追加学習と再評価をどの頻度で行うか、その費用が月額に含まれるか都度見積もりかを、契約前に確認しておくと後の想定外を防げます。
関連記事:AI導入にかかる費用の相場は?3つのパターンと主要ツール料金を整理
全国8,000人調査で、AI活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。
失敗しないAI開発会社の選び方
会社を絞り込む前に、確認の順番を決めておくと比較がぶれません。ここでは4つの観点に分けて整理します。
関連記事:AIエージェント構築サービス・プラットフォーム比較|主要11社の特徴と失敗しない選び方
得意領域と実績を、技術の種類で確認する
実績の件数だけを見ても判断はできません。同じAI開発でも、画像認識と自然言語処理では蓄積している学習データも評価のノウハウも別物だからです。
確認したいのは次の3点です。
- 自社の課題と同じ技術の種類で、稼働まで到達した案件があるか
- 同じ業界での実績があるか、業界特有の制約を理解しているか
- PoCで終わった案件と、本番運用まで進んだ案件の比率をどう説明するか
3つ目は答えにくい質問ですが、避けずに具体的な進め方で答えられる会社は、運用フェーズまで見ている可能性が高くなります。あわせて、担当するチームの規模と、稼働後に誰が窓口になるかも聞いておくと、提案時の体制と実際の体制の差を早めに把握できます。
契約形態と成果物の権利を先に決める
AI開発でとくに揉めやすいのが、学習済みモデルやソースコードの権利がどちらに残るかです。将来の再利用や、別の会社への切り替えに直結します。
経済産業省は2025年2月18日にAIの利用・開発に関する契約チェックリストを公表しています(出典: meti.go.jp)。AIの技術や法務に慣れていない企業でも、提供するデータの利用範囲や契約上の条件を検討できるよう、確認すべき論点を具体的に示した資料です。社内法務が契約条項を詰める場面と、担当者が初期検討をする場面の両方が想定されており、発注側が読む前提で作られています。
背景として、提供したデータが想定外の目的に使われたり第三者に渡ったりする懸念が実務で挙がっていたことが挙げられています。
最低限、次の3点は契約書に明記されているかを確認してください。
- 学習済みモデル、ソースコード、ドキュメントの権利がどちらに帰属するか
- 提供したデータを、他社向けの開発に再利用してよいか
- 請負契約か準委任契約か、どこまでが成果物の保証範囲か
3点のなかでとくに揉めやすいのが2つ目です。提供したデータで学習したモデルが他社案件に転用されると、自社の優位性がそのまま外へ流れます。契約書に条項がない場合は、見積もり段階で書面に残すよう依頼してください。
4つの段階に区切って発注する
AI開発は、作ってみるまで狙った精度が出るかどうかが分かりません。この性質に合わせて、経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、段階を分けて進める探索的段階型の開発方式を示しています(出典: meti.go.jp)。
段階は次の4つです。
- アセスメント:そもそも学習済みモデルを作れる見込みがあるかを見極める
- PoC:用意した学習用データで、必要な精度のモデルが作れるかを検証する
- 開発:実際に学習済みモデルを作る
- 追加学習:納品した学習済みモデルを、追加のデータで学習し直す
この4段階を1本の契約でまとめて請け負わせると、精度が出なかった場合に費用の切り分けができません。段階ごとに契約を分け、次に進むかどうかを都度判断する形にすると、想定外の支出を抑えられます。提案を受け取ったら、どの段階までが今回の見積もりに含まれるのかを、この4区分に当てはめて確認すると比較しやすくなります。
発注側が用意するものを決めておく
外部に任せても、発注側の準備が薄いままだと検証で止まります。GiftXが実施したビジネス職生成AI活用実態調査2026では、組織の課題として「AI活用が個人任せになっている」が25.9%で最も多く、「業務に組み込む仕組みや専門人材がいない」が19.1%で続きました(複数回答)。仕組みを持たないまま外部に投げても、成果物を受け取る側の体制が整いません。
詳細な調査データは「ビジネス職生成AI活用実態調査(2026年版)」にてご覧ください。
発注前に、次の3つは自社で決めておくことをおすすめします。
- 何が達成できたら成功とみなすか、数値で定義する
- 学習に使うデータをどこから、どの範囲で提供できるか
- 現場の誰が、どのくらいの時間で確認に関わるか
この3つが決まっていない状態で見積もりを取ると、各社の提案の前提がばらつき、金額を比べても意味がなくなります。とくに1つ目が曖昧なまま進むと、検証が終わっても成功だったのか判断できず、本番導入の稟議が通らないまま止まります。
AI開発を外部に任せるときに陥りがちな3つの落とし穴
発注そのものは進んでも、成果が出ないまま終わるケースには共通した型があります。
落とし穴1|いきなり全ての業務をまとめて任せようとする
複数の業務を一度に対象にすると、要件定義が長引き、検証の段階で何を評価しているのかが分からなくなります。対象が広いほど、うまくいかなかったときの原因も特定できません。
落とし穴2|壮大なAI戦略から考えて手が止まる
全社の構想から入ると、投資対効果の試算や体制の議論が先に立ち、着手までに半年が過ぎることがあります。その間に前提となる技術が変わり、また設計をやり直すことになります。
落とし穴3|既製品のチャット型AIツールでは業務フローに組み込めない
既製のチャット型ツールは手軽ですが、自社の手順や判断基準を覚えさせられず、業務フローに組み込めるレベルの質に届かないことがあります。都度指示を出す使い方のままでは、担当者の手間はあまり減りません。
スモールスタートで1業務をAIエージェントに任せる
避け方は単純で、まず1業務を選んで小さく作り、動かしながら直すことです。1業務であれば成功の定義がはっきりし、うまくいかなかった原因もすぐ特定できます。効果が確かめられてから隣接する業務へ広げれば、投資の判断もしやすくなります。GiftXでは、こうしたスモールスタート前提のAIエージェント構築を1業務単位から伴走支援しています。詳細は AIエージェント構築支援サービス をご覧ください。
AI開発会社に関するよくある質問
発注を検討する段階でよく挙がる質問をまとめます。
AI開発にはどのくらいの期間がかかりますか
PoCで1〜2か月、既存業務への小規模な組み込みで2〜4か月が目安です。本開発まで含めると3〜6か月かかることが多く、学習データが整っていない場合はさらに前段の作業期間が加わります。
データが整理されていなくても依頼できますか
依頼はできますが、データの収集とラベル付けが別途費用として発生します。データ活用・分析型の会社は、この整備工程から入ることを前提にしているため、社内にデータが散らばっている段階ではそちらのタイプが向いています。
学習済みモデルの権利は自社に残りますか
契約の書き方によります。何も定めないと、開発側に権利が残る形になっている場合があります。学習済みモデル、ソースコード、ドキュメントのそれぞれについて、帰属と再利用の可否を契約書に明記してください。
大手とベンチャーのどちらに頼むべきですか
案件の規模と、既存システムとの連携の有無で決まります。基幹システムとつなぐ必要があり全社規模で進めるなら大手、1業務に絞って早く試すならベンチャーや実装特化の会社が合います。
相見積もりは何社くらい取るべきですか
3社程度が現実的です。ただし各社に同じ前提(成功の定義、提供できるデータ、確認に関われる人員)を伝えないと、金額を比べても判断材料になりません。
まとめ
AI開発会社は、総合コンサル・大手SIer型、AI専業テック型、データ活用・分析型、業務実装・伴走型の4つに分けて考えると比較しやすくなります。会社名の一覧から入るのではなく、依頼したい範囲がどのフェーズにあるかを先に決めてください。費用はフェーズごとに大きく変わり、学習データの整備がどちらの負担かで実質的な金額も変わります。契約では、成果物の権利と段階ごとの区切り方を先に確認しておくと、想定外の支出を防げます。そのうえで最初の一歩を選ぶなら、全社構想からではなく、1業務を切り出して自動化し、効果を確かめてから広げる進め方が着実です。
AI活用の伴走支援をご検討の方へ
本記事で紹介したAIエージェントの活用に向けて、自社の業務でも具体的に進めたい・相談したいとお考えの方は、ぜひGiftX AIエージェント構築支援までお問い合わせください。
GiftX AIエージェント構築支援では、貴社の業務に合わせて1業務単位のスモールスタートから本番運用まで、AIエージェント構築をワンストップで支援します。マーケティングや営業の現場で使うユースケースの洗い出しから、PoC、本番運用、社内ナレッジ化まで伴走します。
AI活用にご関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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