Grok Voiceとは|アプリの音声会話と、開発者向けの音声エージェント
Grok Voice とは、SpaceXAI(旧xAI)の AI アシスタント Grok と音声で会話する機能と、その仕組みを開発者向けに開放した API の総称です。
同じ「Grok Voice」でも、スマホアプリで話しかける使い方と、自社の電話窓口やサービスに音声エージェントを組み込む使い方では、必要なものも費用も変わります。まずはこの2つを切り分けておくと、以降の料金や機能の話を読み違えません。
特徴として挙げられているのが、応答までの速さです。公式発表によると、音声が返り始めるまでの平均は1秒未満で、音声の推論能力を測るベンチマーク Big Bench Audio では1位(スコア95%)と説明されています(出典: x.ai)。低遅延で言葉が返るため、相手の話に割り込んだり言い直したりしても会話が途切れにくい、という位置づけです。
関連記事:Grokとは?できること・使い方・料金とChatGPTとの違いを整理
アプリで話す音声モードと、自社サービスに組み込むVoice Agent API
1つ目は、grok.com やスマホアプリで使える音声モードです。マイクに向かって話すと Grok が音声で答え、Web や X をその場で検索しながら会話を続けられます。手が塞がっている移動中でも調べものを進められる使い方です。
2つ目が、開発者向けの Grok Voice Agent API です。SpaceXAI は2025年12月にこの API を公開し、モバイルアプリと Tesla の車内で動いている Grok Voice と同じ仕組みを開発者に開放したと説明しています(出典: x.ai)。自社の電話窓口や予約受付に、Grok と同じ話し方をする音声エージェントを置けるようになった、と考えると分かりやすいです。
この記事で「アプリ」と書いている部分は前者、「API」「Voice Agent Builder」と書いている部分は後者を指します。
Think Fastモデルの世代|1.0は非推奨で、標準は2.0
音声で会話するモデルには世代があり、公式ドキュメントには3つが載っています。
- grok-voice-think-fast-2.0:現行のフラッグシップ。推論が既定で有効になっている
- grok-voice-latest:上記2.0を指すエイリアス(別名)
- grok-voice-think-fast-1.0:前世代。料金表では非推奨(Deprecated)と表記されている
公式ドキュメントは、2.0 は以前の世代より単純な指示で済み、推論が既定で有効になっていると説明しています(出典: docs.x.ai)。一方で、後述する LiveKit のプラグインは既定のモデルが前世代の 1.0 のままです。何も指定せずに動かすと古い世代で動いてしまうため、組み込むときはモデル名を明示的に指定しておくと安全です。
Grok Voiceでできること|対応言語・声・会話中のツール呼び出し
Grok Voice は、単に音声で受け答えするだけでなく、会話を続けながら検索したり社内の文書を引いたりできます。ここでは、読者から質問の多い日本語対応と、声の種類、会話中のツール呼び出しの3点を見ていきます。
日本語を含む20以上の言語に対応している
公式ドキュメントの対応言語表には、英語・アラビア語・ベンガル語・中国語(簡体字)・フランス語・ドイツ語・ヒンディー語・インドネシア語・イタリア語・日本語・韓国語・ポルトガル語・ロシア語・スペイン語・トルコ語・ベトナム語が並んでいます(出典: docs.x.ai)。日本語は対応言語に含まれており、話した言語に合わせて自動で応答する挙動になっています。会話の途中で言語を切り替えることもできます。
API から使う場合は、audio.input.transcription.language_hint に BCP-47 という言語コードの規格に沿った値を渡して、認識させたい言語を指定できます。スペイン語とポルトガル語だけは地域の指定が必須で、es や pt のような大枠の指定は受け付けません。
Ara・Eve・Leoの音声と、2分の音声からの声のクローン
声は複数用意されており、公式発表では Ara・Eve・Leo が挙げられています。日常会話で自然に聞こえることに加えて、医療・金融・法務のような分野固有の用語の発音にも対応していると説明されています(出典: x.ai)。プロンプトで [whisper](ささやき)や [laugh](笑い)のような指示を混ぜると、話し方を変えることもできます。
声の一覧は API から取得でき、読み上げ(Text to Speech)と共通のものが使えます。さらに、2分ほどの音声があれば自社の声をクローンして使うこともできます(出典: x.ai)。
会話しながらWeb検索・X検索・社内文書の検索ができる
Grok Voice Agent API では、会話を続けながら次のようなツールを呼び出せます。
- web_search:Web を検索して最新の情報を取り込む
- x_search:X の投稿やユーザー情報を検索する
- file_search:自社でアップロードした文書のコレクションを検索する
- mcp:MCP(Model Context Protocol、AI と外部システムをつなぐ共通規格)のサーバーに接続する
- function:自社で定義した独自の処理を呼び出す
たとえば問い合わせを受けながら社内のマニュアルを引き、そのまま口頭で回答する、といった流れを1つの会話の中で完結させられます。ノーコードで作れる Voice Agent Builder の側では、Gmail・Google カレンダー・Outlook・Notion などとの連携も用意されています(出典: x.ai)。
Grok Voiceの使い方|3つの入口と、最初に選ぶもの
Grok Voice を試す入口は3つあり、必要な知識と手間がそれぞれ違います。何から触るかを決めるところから始めると、遠回りせずに済みます。
アプリの音声モードで試す
いちばん手軽なのは、grok.com またはスマホアプリの音声モードです。アカウントを作って音声モードに切り替えるだけで、日本語で話しかけられます。無料プランの範囲でも音声モードは使えるため、声の自然さや応答の速さを確かめる目的なら、まずここで十分です。
自社で使えるかどうかを判断したいときも、いきなり API に取りかからず、この段階で「聞き取りの精度は業務に耐えるか」「言い直したときにどう振る舞うか」を試しておくと、後の判断が早くなります。
AIエージェントを「どう作り、どう育てるか」を、GiftX記事制作エージェントの実物で解説。
Voice Agent Builderでコードを書かずに作る
2つ目が、Grok Voice Agent Builder です。ブラウザ上で音声エージェントを組み立て、その場で話しかけて動きを確認できるツールで、公式サイトではベータ版として案内されています(出典: x.ai)。コードを書かずに、通話の流れを文章で指示する形で組み立てられます。
用意されている機能は次のとおりです。
- 通話の流れの指示:「最初に注文番号を聞く」「解決したら内容を復唱する」といった手順を文章で書く
- ナレッジベース:PDF・Markdown・テキストの資料を読み込ませて、それをもとに答えさせる
- ガードレール:カード番号を読み上げないなど、やらせないことを決める
- 電話番号:無料で番号を取得するか、SIP 接続で既存の番号をそのまま使う
自社の資料を読み込ませて受け答えを試すところまでを、開発者の手を借りずに進められます。まず社内で小さく試したい段階では、この入口が有力な選択肢になります。
APIとLiveKitで自社のサービスに組み込む
3つ目が API です。接続方法は WebSocket・WebRTC・SIP・Twilio が用意されており、wss://api.x.ai/v1/realtime?model=\{モデル名\} に接続します。仕様は OpenAI の Realtime API に合わせてあり、公式ドキュメントは、多くの OpenAI 向けライブラリは接続先の URL を変えるだけで動くと説明しています(出典: docs.x.ai)。すでに他社の音声 API を触ったことがあれば、そのまま移せる部分が多いということです。
音声通話そのものの制御には LiveKit(リアルタイム音声・映像を扱うオープンソースの基盤)を組み合わせる方法が公式に用意されています。Python なら livekit-agents[xai] を入れ、環境変数に API キーを設定し、RealtimeModel(voice="Ara") を渡すだけで動きます(出典: livekit.io)。前述のとおり既定のモデルは前世代のままなので、モデル名の指定を忘れないようにします。
Grok Voiceの料金|無料の範囲とAPIの1分あたりの費用
アプリの音声モードは無料プランでも使えますが、利用回数に制限があり、具体的な数値は公開されていません。
API は従量課金で、使い方ごとに単価が分かれます。以下は2026年9月時点の公式料金です(出典: docs.x.ai)。
| 使い方 | モデル | 料金 |
|---|---|---|
| 音声で会話する(Speech to Speech) | grok-voice-think-fast-2.0 | 音声1分あたり0.08ドル(1時間4.80ドル)+テキスト入力0.004ドル |
| 音声で会話する(前世代・非推奨) | grok-voice-think-fast-1.0 | 音声1分あたり0.05ドル(1時間3.00ドル) |
| 音声を文字にする(音声認識・Speech to Text) | 指定なし | 1時間あたり0.10ドル(REST)/0.20ドル(ストリーミング) |
| 文字を読み上げる(音声合成・Text to Speech) | 指定なし | 100万文字あたり15.00ドル |
注意したいのは製品ページの「1分あたり0.05ドル」表示です。これは非推奨の前世代 1.0 の金額で、現行の 2.0 は1分あたり0.08ドルです(2026年9月時点)。見積もりでは使うモデルを先に決めます。
会話中に Web 検索や X 検索を呼び出すと別途加算されます。Web 検索と X 検索は1,000回あたり5ドル、社内文書の検索は1,000回あたり2.50ドルです(2026年9月時点、出典: docs.x.ai)。通話時間だけの見積もりでは差が出ます。
関連記事:Grokの料金はいくら?無料版・SuperGrok・X Premiumを比較
ChatGPT Voiceとの違い|無料の範囲と、API の課金方式
Grok Voice と ChatGPT Voice は、どちらも音声で会話でき、開発者向けの API も提供している点で似ています。違いが出るのは、API の課金方式と、会話中に呼び出せるツールの種類です。下の表は、無料プランでの使用可否、API の課金、仕様、ツールの4点で両者を並べたものです(2026年9月時点、出典: docs.x.ai、openai.com)。自分がアプリとして使いたいのか、自社サービスに組み込みたいのかで、見るべき行が変わります。
| 観点 | Grok Voice | ChatGPT Voice |
|---|---|---|
| 無料プランでの音声会話 | 使える(回数の上限あり・具体的な数値は非公開) | 使える(有料プランは GPT-Live-1、無料プランは GPT-Live-1 mini) |
| 開発者向け API の課金 | 音声の時間で課金(1分あたり0.08ドル) | 音声トークンで課金(gpt-realtime-2.1 は入力100万トークン32ドル/出力64ドル) |
| API の仕様 | OpenAI Realtime API に互換 | Realtime API 本体 |
| 会話中に呼べるツール | Web検索・X検索・社内文書検索・MCP・独自の関数 | Web検索・ファイル検索など |
課金方式の違いは見積もりのしやすさに直結します。Grok Voice は通話時間に単価を掛ければ概算が出せるのに対し、トークン課金は話した長さと内容によって変動するため、事前に読みにくくなります。一方で、すでに OpenAI の Realtime API で組んだ資産があるなら、接続先を変えるだけで Grok Voice を試せるのは移行のしやすさとして効いてきます(出典: docs.x.ai、openai.com、いずれも2026年9月時点)。どちらが安いかは通話の長さと本数で変わるので、自社の想定件数を当てはめて比べるのが確実です。
全国8,000人調査で、AIの活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。
Grok Voiceを業務で使うイメージ|まず任せる1業務の選び方
公式サイトでは、想定される使いどころとして次の場面が挙げられています。
- サポート窓口:定型的な問い合わせの一次対応
- 受付:来訪や取り次ぎの受け答え
- 予約の受け付け:日時の調整と確認
共通しているのは、決まった手順があり、同じ内容の問い合わせが繰り返し届く業務です。
ただし、音声で受け答えができることと、業務が回ることは別の話です。GiftX の調査では、AI を使っている人のうち約7割(70.3%)がチャットで質問したり文章を作らせたりする段階にとどまっており、複数の工程を任せる段階まで進んでいるのは約1割(10.5%)にとどまります。音声という入口が変わっても、任せる業務を決めきれなければ同じ壁に当たります。
詳細な調査データは「ビジネス職生成AI活用実態調査(2026年版)」にてご覧ください。
たとえば電話の一次受けを AI に任せるケースを考えると、いきなり全ての電話を置き換えるのではなく、通話後の記録作成から始める形が取りやすくなります。GiftX でも、電話対応の通話を AI に文字起こしさせて要約し、対応履歴を自動で残す取り組みを進めており、通話1件あたり8分ほどかかっていた後処理が1分程度まで短くなる例が出ています。応対そのものを任せる前に、記録や要約のような後工程から始めると、失敗しても実害が小さく済みます。
Grok Voiceを使う前に押さえておく注意点
組み込む前に確認しておきたい点がいくつかあります。
1つ目は、OpenAI の Realtime API と互換とはいえ、完全に同じではないことです。公式ドキュメントには、conversation.item.retrieve は非対応、output_audio_buffer.clear は WebRTC と SIP でのみ利用可能、といった差分が明記されています(出典: docs.x.ai)。移行するときは、使っている機能が対応表に載っているかを先に確かめます。
2つ目は会話の保持期間です。会話の再開を有効にしていても、履歴は30分の無操作で失効します。長時間の折り返しを前提にした設計にはしません。
3つ目は、LiveKit のプラグインで独自ツールを使う場合、Python でしか利用できない点です(出典: livekit.io)。Node.js で組む予定がある場合は、この制約を先に確認しておきます。
なお、翻訳をリアルタイムで行う Live Translation は、公式サイトで近日提供と案内されている段階です。
関連記事:Grokに学習させない設定|Xとgrok.comの2か所と止まらない4ケース
音声AIを業務に入れるときに陥りがちな3つの落とし穴
音声で話せることと、業務が回ることは別です。実際に入れようとすると、次の3つでつまずきがちです。
落とし穴1|いきなり全ての電話を置き換えようとする
最初から窓口全体を任せようとすると、例外的な問い合わせへの対応まで作り込む必要が出て、いつまでも本番に入れません。まずは件数の多い定型的な用件だけを切り出すほうが、結果として早く回り始めます。
落とし穴2|壮大なAI戦略から考えて手が止まる
全社でどう使うかを描くところから入ると、検討が長引いて何も動きません。声の自然さや聞き取りの精度は、実際に話してみないと判断できないものです。
落とし穴3|既製品のチャット型AIツールでは業務フローに組み込めない
汎用のチャットツールをそのまま使うと、自社の手順や言い回しに合わせる部分で行き詰まります。社内の資料を読ませ、やらせないことを決め、既存の電話番号につなぐところまでを含めて考える必要があります。
スモールスタートで1業務をAIエージェントに任せる
音声AIも同じで、最初に決めるべきは「どの1業務を任せるか」です。通話後の記録作成のように範囲が限定され、失敗しても実害の小さい工程から始め、動くようになってから範囲を広げていくのが結局のところ近道になります。GiftX では、こうしたスモールスタート前提の構築を1業務単位から伴走支援しています。詳細は AIエージェント構築支援サービス をご覧ください。
Grok Voiceに関するよくある質問
Grok Voiceは日本語に対応していますか?
対応しています。公式ドキュメントの対応言語表には日本語が含まれており、20以上の言語に対応しています(出典: docs.x.ai)。話した言語に合わせて自動で応答し、会話の途中で言語を切り替えることもできます。
Grok Voiceは無料で使えますか?
アプリの音声モードは無料プランの範囲でも使えます。ただし利用回数には制限があり、具体的な数値は公開されていません。開発者向けの API は無料枠ではなく従量課金で、音声1分あたり0.08ドルから利用できます(2026年9月時点、出典: docs.x.ai)。
Think Fast 1.0と2.0はどちらを使えばいいですか?
現行のフラッグシップは 2.0 です。1.0 は料金表で非推奨と表記されています。単価は 1.0 のほうが安い(1分0.05ドル、2026年9月時点)ものの、非推奨の世代を新規に選ぶ理由は乏しく、これから組むなら 2.0 か、その別名である grok-voice-latest を指定します。
コードを書かずに音声エージェントを作れますか?
作れます。Grok Voice Agent Builder を使うと、ブラウザ上で通話の流れを文章で指示し、その場で話しかけて確認できます。公式サイトではベータ版として案内されています(出典: x.ai)。
既存の電話番号のまま使えますか?
使えます。SIP 接続に対応しており、既存の電話システムの番号をそのまま利用できます。新しく番号を取得することもできます(出典: x.ai)。
まとめ|まず1業務を決めてから組み込みに進む
Grok Voice は、アプリの音声会話と、開発者向けの音声エージェント API の2つを指します。日本語を含む20以上の言語に対応し、会話しながら Web や社内文書を検索できる点が特徴で、API は音声1分あたり0.08ドルの従量課金です(2026年9月時点)。製品ページの0.05ドル表記は非推奨の前世代のものなので、見積もりの際は取り違えないようにします。
まずはアプリの音声モードで精度を確かめ、次に Voice Agent Builder で自社の手順を試し、そのうえで API に進む順序が無理がありません。そして最初に決めるのは、どの1業務を任せるかです。範囲を絞って始めるほうが、結果的に早く定着します。
AI活用の伴走支援をご検討の方へ
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