DXリスキリング助成金とは?AI研修に使える東京都の助成制度
DXリスキリング助成金とは、都内の中小企業が従業員に対してDXやAIに関する研修を実施する際、その経費や受講中の賃金の一部を東京都が助成する制度です。実施主体は公益財団法人東京しごと財団で、社員のリスキリング(新しい業務に必要なスキルの学び直し)を後押しする目的で設けられています。
生成AIやデータ活用といった実践的なテーマの研修が対象になりやすく、AI研修の費用負担を抑える手段として注目されています。まずは制度の全体像として、都内中小企業が対象であること、経費と賃金の両面で助成が受けられることを押さえておくとよいでしょう。
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なぜ今、AI研修・リスキリングが必要なのか
生成AIを業務で使う人は増えていますが、その使い方は「調べ物や下書きをチャットで頼む」段階にとどまっている企業が多いのが実情です。GiftXが実施した「ビジネス職生成AI活用実態調査2026」では、AIの活用度を4段階に分けたとき、チャットで質問や成果物作成を行う段階(L1・L2)にとどまる人が約7割を占め、AIエージェントが複数工程を自動で進めるL4に到達した人は約1割にとどまりました。
| AI活用レベル | 内容 | 割合 |
|---|---|---|
| L1 | 都度チャットで質問・相談・調べ物 | 28.1% |
| L2 | 都度チャットで文章・資料などの成果物を作らせる | 42.2% |
| L3 | 自社の情報・手順を覚えさせ、同じ品質で繰り返す | 19.3% |
| L4 | AIエージェントが複数工程の業務を半自動〜自動で進める | 10.5% |
同調査では、組織側の課題として「学ぶ機会・研修制度がない」が約2割(20.6%、複数回答)挙がる一方、「もっと活用したい」と考える人は約6割(59.9%)にのぼりました。使いたい気持ちはあるのに、学ぶ機会が用意されていないという状態です。だからこそ、費用負担を抑えて計画的にAI研修へ投資できる助成金の存在は、リスキリングを前に進める後押しになります。詳細な調査データは「ビジネス職生成AI活用実態調査(2026年版)」にてご覧ください。
東京都制度と国の人材開発支援助成金の違い|AI研修でどちらを選ぶ
AI研修に使える助成金は、東京都のDXリスキリング助成金だけではありません。国(厚生労働省)の人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」も、DX・AIに関する研修を助成対象にしています。まずは2つの制度の性格の違いを、実施主体・対象・助成の手厚さの観点で整理します。下表は主要な観点で両制度を並べたもので、自社がどちらを使うべきかの判断材料になります。
| 観点 | 東京都 DXリスキリング助成金 | 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) |
|---|---|---|
| 実施主体 | 東京しごと財団(東京都) | 厚生労働省(国) |
| 主な対象 | 都内に本社・事業所がある中小企業等 | 全国の事業主(中小企業が手厚い) |
| 助成対象の研修 | DX・AIなど実践的な研修(OFF-JT) | 事業展開・DXに伴うリスキリング研修 |
| 経費助成率の目安 | 中小企業でおおむね経費の3分の2〜4分の3程度 | 中小企業で最大75%(賃上げ要件で加算) |
| 賃金助成の目安 | 受講中の賃金に対する定額助成あり | 1人1時間あたり定額(中小企業が手厚い) |
| 他制度との併用 | 国など他の制度との重複助成は不可 | 同一研修での重複助成は不可 |
上記の助成率・金額はいずれも目安です(2026年時点、出典: 東京しごと財団 shigotozaidan.or.jp、厚生労働省 mhlw.go.jp)。年度ごとに要綱が改定されるため、実際の申請前には令和8年度の各募集要項で必ず確認してください。
併用不可を踏まえた助成金の選び方
2つの制度は、同じ研修に対して重ねて助成を受けることはできません。したがって「両方使う」ではなく「どちらか一方を選ぶ」のが基本的な考え方になります。
選ぶ際の目安は次のとおりです。都内の中小企業で、比較的短い時間の研修から手早く始めたい場合は、東京都のDXリスキリング助成金が候補になります。全国の拠点を対象にしたい場合や、事業展開に伴う本格的なリスキリングとして中長期の研修を計画する場合は、国の人材開発支援助成金が向いています。自社の所在地・研修規模・スケジュールを軸に、どちらの制度の要件に無理なく合わせられるかで判断するとよいでしょう。
AI研修の対象講座と要件|研修時間・OFF-JT・eラーニングの条件
助成金を活用するには、実施するAI研修が制度の対象要件を満たしている必要があります。ここでは、どのような研修が対象になり、どんな条件が課されるのかを整理します。対象になりやすいのは、生成AIの業務活用、データ分析、プログラミング、DX推進の基礎といった、実務に直結する実践的なテーマの研修です。一般的な心構えを説くだけの内容や、趣味・自己啓発の色が濃い講座は対象外になりやすい点に注意が必要です。
OFF-JTと研修時間の要件
助成の対象は、通常の業務から離れて実施するOFF-JT(Off the Job Training、業務外での集合研修やeラーニング等による訓練)が基本です。あわせて、1コースあたりの研修時間に下限が設けられています。国の人材開発支援助成金では1コース10時間以上が基本とされる一方、東京都のDXリスキリング助成金では、より短い時間から利用できるコースが用意されている年度もあります。研修時間の下限を満たさないと助成の対象外になるため、カリキュラムを組む段階で必要時間を確認しておくことが欠かせません。時間要件はコースや年度で異なるため、令和8年度の要綱で確認してください。
eラーニングやオンライン研修は対象か
eラーニングやオンライン形式の研修も、受講記録が残り、要件を満たす内容であれば助成対象になり得ます。ただし、受講の事実や時間を客観的に確認できる仕組み(受講ログや修了証など)が求められることが一般的です。集合研修・オンライン・eラーニングのいずれの形式でも、後述する実績報告で受講の証跡を提出できるように、記録を残しておくことが大切です。
助成率・助成額の目安|経費助成と賃金助成でどれだけ戻るか
助成金は大きく「経費助成」と「賃金助成」の2種類で構成されます。経費助成は、研修の受講料や教材費など研修そのものにかかった費用の一部を助成するものです。賃金助成は、従業員が研修を受けている時間に支払った賃金の一部を助成するものです。
東京都のDXリスキリング助成金では、中小企業でおおむね経費の3分の2〜4分の3程度が助成され、加えて受講中の賃金に対する定額の助成が受けられます。1社あたりの助成上限額が設定されているため、複数名・複数コースを予定している場合は上限内に収まるかを試算しておくとよいでしょう。国の人材開発支援助成金でも、中小企業は経費の最大75%程度と1人1時間あたりの賃金助成が用意されており、賃上げなどの要件を満たすとさらに加算される仕組みです。これらの率・金額はいずれも目安で、年度によって変わります(2026年時点、出典: 東京しごと財団 shigotozaidan.or.jp、厚生労働省 mhlw.go.jp)。申請前に最新の令和8年度要綱で確認してください。
関連記事:AI導入にかかる費用の相場は?3つのパターンと主要ツール料金を整理
AI研修助成金 申請の流れ|計画届から実績報告まで
助成金は「研修を実施してから申請する」のではなく、「事前に計画を届け出てから研修を実施する」流れが基本です。順序を誤ると助成を受けられないため、全体の流れを先に把握しておくことが欠かせません。
申請から受給までの基本ステップ
一般的な流れは次の5ステップです。まず、対象となる助成金と実施する研修を決め、要件に合うカリキュラムを組みます。次に、研修開始前に計画届(訓練計画届など)を提出します。計画が受理されたら、計画どおりに研修を実施します。研修後は、受講記録や支払いを証明する書類をそろえて実績報告を行います。最後に、審査を経て助成金が支給されます。いずれの制度も、計画の事前提出には締切があり、研修開始日から逆算した準備が必要です。
令和8年度の募集日程と誰が申請するか
募集の受付時期や予算枠は年度ごとに設定されます。令和8年度(2026年度)の受付期間や申請枠についても、東京しごと財団や厚生労働省の最新情報で確認してください。予算枠に達すると年度途中でも受付が締め切られることがあるため、早めの準備が安全です。申請するのは研修を受けさせる事業主(企業)です。手続きが煩雑に感じる場合は、社会保険労務士(社労士)などの専門家に申請代行を依頼する方法もありますが、自社で申請する企業も少なくありません。まずは要綱を読み、自社で対応できる範囲を見極めるところから始めるとよいでしょう。
全国8,000人調査で、AI活用方法によって生産性向上に約3.8倍の差が生まれることが判明。
Before/After|助成金活用でAI研修の自己負担はどう変わるか
助成金を使うと、研修コストの自己負担がどの程度変わるのかを、具体的なケースで見てみます。例えば、従業員30名規模の都内中小企業が、5名を対象に生成AI活用研修(OFF-JT、約10時間)を実施するケースを考えます。以下の金額は2026年時点の一例で、実際の受講料や助成額は研修内容や年度の要綱によって変わります。
| 項目 | 助成金なし | 助成金活用(東京都制度の目安) |
|---|---|---|
| 研修受講料 | 1名あたり約8万円 × 5名 = 約40万円 | 同額を支出後、経費助成の対象に |
| 自己負担の見込み | 約40万円を全額自己負担 | 経費のおおむね半分以上が助成され、自己負担は十数万円規模まで圧縮 |
このように、経費助成だけでも自己負担を大きく抑えられる見込みが立ちます(助成率・上限は年度要綱による)。さらに受講中の賃金に対する助成も加われば、実質的な負担はより軽くなります。浮いた原資で受講対象を広げたり、研修時間を増やしたりと、次のリスキリング投資に回せる点も見逃せません。数値はあくまで一例で、実際の助成額は研修内容・人数・年度の要綱によって変わります。
AI研修を実務に定着させた自社事例
助成金で研修を実施しても、「受けて終わり」では投資が成果につながりません。AI Growth Lab編集部(GiftX)が支援してきた現場でも、研修を実務に定着させる設計が成果を分けています。ここでは2つの事例を紹介します。
関連記事:企業の生成AI活用事例15選|業務別・業界別の成功例と主要ツール・導入ステップ
部門の実業務を教材にした研修で利用率が約3.5倍に
ある企業では、部門ごとに実際の業務のユースケースを教材にした生成AI研修を設計・実施しました。汎用的なツール操作の座学ではなく、「自分の業務で1つ自動化を作って持ち帰る」形式にしたことがポイントです。その結果、研修後のAI業務利用率は約2割から約7割へと、およそ3.5倍に高まりました。研修を現場の業務にひも付けることで、学んだことがそのまま日常業務で使われるようになった例です。
活用度を計測して定着を後押しした事例
別の企業では、部門別のAI利用状況や自動化された業務、削減できた工数を月次で計測する仕組みを整えました。導入後の利用状況が可視化されることで、活用が止まっている部門のボトルネック(ツール・スキル・業務設計)を特定し、打ち手を提案できるようになりました。研修とあわせて活用度を測る仕組みを持つことで、低活用の部門を底上げし、投資対効果を説明できる状態に近づいた例といえます。
助成金を使ってAI研修を始めるときに陥りがちな3つの落とし穴
助成金という後押しがあると、つい研修そのものを大きく構えたくなりますが、それが定着を妨げることがあります。AI研修を始める際に陥りがちな3つの落とし穴を挙げておきます。
落とし穴1:いきなり全社・全部門で一斉にやろうとする
最初から全部門を対象に大規模研修を組むと、現場の負荷が一気に高まり、受講しただけで終わりがちです。まずは対象を絞り、成果を確かめてから広げる方が定着します。
落とし穴2:壮大なDX人材育成計画から入って手が止まる
体系的な育成ロードマップを完璧に作ろうとすると、計画づくりに時間がかかり、肝心の研修がなかなか始まりません。大きな設計図より、まず1回目の研修を回すことを優先したい場面です。
落とし穴3:汎用的な操作研修だけで業務フローに定着しない
ツールの使い方を一般論で学ぶだけでは、現場の業務フローに接続されず、研修後に使われなくなりがちです。自社の実務を教材にし、研修のなかで1つ自動化を作る形にすると定着しやすくなります。
スモールスタートで1部門・1業務から始める
これらを踏まえると、助成金を使うAI研修も、いきなり全社へ広げるのではなく、スモールスタートで1部門・1業務から実務直結で始めるのが現実的です。助成金の予算枠や申請の締切に追われて対象を広げすぎると、一人ひとりのフォローが手薄になり、かえって定着が浅くなりがちです。まずは成果を出せる範囲に絞り、小さく始めて定着を確かめ、成果が見えたところで次の部門へ対象を広げていく進め方が、リスキリング投資を無駄にしないコツになります。
自社に合ったAI研修・リスキリングを進めたい方へ
ここまで紹介した「1部門・1業務から実務直結で始める」進め方を、自社で実践したいとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
GiftXでは、実際の業務をそのまま教材にする生成AI・AIエージェント活用研修(リスキリング支援)を提供しています。座学だけで終わらせず、研修のなかで自分の業務を1つ自動化して持ち帰る形式で、研修後の定着まで伴走します。助成金の活用を前提とした研修設計についてもご相談いただけます。
詳細はGiftXのAI研修・活用支援サービスでご覧いただけます。
よくある質問(FAQ)
DXリスキリング助成金とAI研修について、よく寄せられる質問をまとめます。
リスキリング助成金でAI研修はできますか?
できます。生成AIの業務活用やデータ分析など、実務に直結する実践的なAI研修は、東京都のDXリスキリング助成金や国の人材開発支援助成金の対象になり得ます。ただし、講座内容や研修時間が要件を満たす必要があるため、事前に要綱の確認が欠かせません。
DXリスキリング助成金の対象は誰ですか?
東京都のDXリスキリング助成金は、都内に本社や事業所がある中小企業などが主な対象です。従業員に対してDX・AIなどの実践的な研修を実施する事業主が申請します。
リスキリング助成金はeラーニングでも対象ですか?
受講記録が残り、要件を満たす内容であれば、eラーニングやオンライン研修も対象になり得ます。受講の事実や時間を客観的に確認できる証跡を残しておくことが求められます。
DXリスキリング助成金は誰が申請するのですか?
研修を受けさせる事業主(企業)が申請します。手続きが煩雑な場合は社会保険労務士に代行を依頼することもできますが、自社で申請する企業も少なくありません。
助成金の申請はいつまでにすればよいですか?
募集の受付時期や予算枠は年度ごとに設定され、予算に達すると年度途中で締め切られることがあります。令和8年度(2026年度)の日程は、東京しごと財団や厚生労働省の最新情報で確認し、研修開始前に計画届を提出できるよう早めに準備してください。
まとめ
DXリスキリング助成金は、都内の中小企業がAI研修の費用負担を抑えながらリスキリングを進めるための有力な選択肢です。国の人材開発支援助成金との違いを押さえ、対象講座や研修時間の要件、経費・賃金の助成率、申請の流れを確認したうえで、自社に合う制度を選ぶことがポイントになります。あわせて意識したいのが、研修を「受けて終わり」にしない定着の設計です。助成金を活用する場合も、いきなり全社に広げるのではなく、スモールスタートで1部門・1業務から実務直結で始め、成果を確かめながら広げていく進め方が、リスキリング投資を成果につなげます。
AI研修の実施・社内へのAI定着をご検討の方へ
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