GPT-5.6とは?OpenAIのSol・Terra・Lunaの違い・料金・選び方

GPT-5.6とは?OpenAIのSol・Terra・Lunaの違い・料金・選び方
目次

GPT-5.6は2026年7月9日に一般提供が始まり、ChatGPTワークとCodexではPlus以上のプランでSol・Terra・Lunaを用途ごとに選べるようになりました。ただしAPI単価は7月30日にTerraとLuna、8月21日にSolが値下げされており、Lunaは入力100万トークンあたり1ドルから0.2ドルへ下がっています。改定前の数字で試算すると、大量処理にかかる費用を5倍に見積もることになります。

3ティアの違いと選び方、改定後の料金、プラン別の提供状況、新たに加わったFast modeまでを、OpenAI公式の発表をもとに整理します。

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GPT-5.6とは|OpenAIが一般提供を開始した3階層のモデル群

GPT-5.6シリーズの全体像を1枚で把握できる概念図。Sol・Terra・Lunaという3つの性能の層と、3層に共通して強化されたコーディング・科学解析・サイバーセキュリティの領域を示す。

GPT-5.6とは、OpenAIが2026年7月9日に一般提供を開始した次世代のフラッグシップAIモデル群です。最上位の「Sol」を中心に、コーディングや科学解析、サイバーセキュリティといった分野でのエージェント能力を大きく引き上げたモデルで、発表時点ではOpenAI史上もっとも高性能とされていました。2026年9月には最上位のGPT-6 Astra、中位のGPT-6 Sol、低価格帯のGPT-6 Lunaが登場しており、その後の位置づけは後述します。ここでいうエージェント能力とは、人が逐一指示しなくても、AIが自分で計画を立てて作業を進める力を指します。

2026年8月25日時点の提供状況を整理すると、以下のようになります。

  • フラッグシップの「Sol」、バランス型の「Terra」、高速・低コスト型の「Luna」の3モデル構成
  • コーディング・生物学などの科学・サイバーセキュリティの3領域でエージェント能力を強化
  • ChatGPT、Codex、OpenAI APIのすべてで利用可能。プランによって選べるモデルが異なる
  • API料金は2026年7月30日(TerraとLuna)と8月21日(Sol)の2度にわたって値下げされた

2026年6月26日に一部の組織向けの限定プレビューとして始まり、そこから約2週間で一般提供に移行した経緯があります。ネット上には限定プレビュー当時の解説が残っていますが、提供範囲も料金も当時とは変わっているため、日付を確認しながら読む必要があります。

なぜ「5.6」とSol・Terra・Lunaに分かれているのか

GPT-5.6でもっとも特徴的なのが、命名規則の刷新です。「5.6」という数字はモデルの世代を示し、「Sol」「Terra」「Luna」はそれぞれ恒久的な性能ティア(階層)を表します。Solは最大性能、Terraはバランス型、Lunaは高速・低コスト型という役割分担です。各ティアは独立したペースで強化されていく設計とされ、今後は「世代番号+ティア名」で性能とコストのバランスを選ぶ形になります。用途に応じてモデルを使い分けるという考え方が、命名のレベルで明確になったといえます。

Sol・Terra・Lunaの違い|GPT-5.6の3つの性能ティア

GPT-5.6の3つの性能ティア(Sol・Terra・Luna)の位置づけの違いを、性能とコストの観点で直感的に比較できる概念図。

GPT-5.6シリーズは、Sol・Terra・Lunaという3つのティアで構成されます。いずれも同じ「5.6」世代に属しますが、想定する用途と性能・コストのバランスが異なります。下表は、3つのティアを位置づけと主な用途の観点で整理したものです。自社で使う場面を想像しながら、どのティアが近いかを見てみてください。

ティア位置づけ主な用途
Sol最上位フラッグシップ最大推論・高度なコーディング・複雑な科学解析
Terraバランス型効率重視の日常的な処理(前世代並みの性能を抑えたコストで)
Luna高速・低コスト大量処理・ルーチンタスク

表のとおり、Solは「とにかく難しい作業を高い精度でこなしたい」場面、Terraは「日常業務をコスト効率よく回したい」場面、Lunaは「単純な処理を大量かつ高速にさばきたい」場面に向いています。OpenAIは公式の告知で、Solを「フラッグシップ」、TerraをGPT-5.5に匹敵する性能を備えた低コストモデル、Lunaを自社で最速かつ最も低コストなモデルと説明していました(いずれもGPT-6世代の登場前の位置づけです)。

3ティアの差はもともと大きかったのですが、2026年7月30日と8月21日の2度の料金改定でコスト面の差はさらに開きました。入力単価で見ると、SolとLunaの差は改定前の5倍から20倍に広がっています。難易度とコストの優先順位を決めれば、3つのうちどれが適しているかは判断しやすくなります。

GPT-5.6はどのプランで使える?チャット・ChatGPTワーク・Codex・API別の提供状況

一般提供の開始にあわせて、GPT-5.6はChatGPT・Codex・OpenAI APIのすべてで使えるようになりました。ただし、契約しているプランと利用する場所によって、選べるモデルと推論設定が変わります。自社で使えるかどうかは、この組み合わせで決まります。

利用する場所対象プラン使えるモデル・設定
チャット(ChatGPT)Plus / Pro / Business / Enterprise一般提供開始時は中程度以上の推論設定でSol。Pro・EnterpriseはSol Proも選択可(2026年10月8日から既定はGPT-6 Solへ順次移行。GPT-5.6 Solも選択欄から選べます)
ChatGPTワーク・Codex無料版 / ChatGPT GoTerra
ChatGPTワーク・CodexPlus / Pro / Business / EnterpriseSol・Terra・Lunaから選択し、それぞれに推論レベルを設定可
API開発者向けSol・Terra・Lunaのすべて

推論モードの提供条件も、この区分とは別に決まっています。後述するmaxは、ChatGPTワークとCodexでGPT-5.6を使えるユーザー全員が設定で有効にできます。ultraは、ChatGPTワークではPro・Enterprise、CodexではPlus以上のプランで利用できます(出典: openai.com)。

APIでは、Responses APIのプログラムによるツール呼び出しがゼロデータ保持(ZDR、送信したデータを保持しない運用)に対応しました。複数のサブエージェントを並列で動かして結果を1回のリクエストにまとめるMulti-agent機能も、ベータ版として提供されています。

GPT-6登場後のGPT-5.6の位置づけ

GPT-6 Astraは、コード、アプリ、調査をまたぐ難しい作業を最後まで進めるための新しい上位モデルです。ChatGPT WorkとCodexではPlus・Pro・Business・Enterpriseへの展開が完了しています(2026年9月9日時点、出典: openai.com、x.com)。通常のChatGPTの会話では「GPT-6 Pro」としてPro・Business・Enterpriseへ段階的に展開されるため、製品面によって名称と対象プランが異なります。

APIではモデルIDがgpt-6-astra、コンテキストウィンドウが105万トークン、最大出力が12万8,000トークンです。料金は入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで、Fast modeは標準処理の最大2倍の速度と2倍の料金で提供されます(2026年9月時点、出典: openai.com)。入力が27万2,000トークンを超える場合は、リクエスト全体に長文向けの追加倍率が適用されるため、単価だけでなく投入する文脈量も見積もる必要があります。

2026年9月23日には、GPT-6世代の中位モデルGPT-6 Solと、低価格帯のGPT-6 Lunaが公開されました。APIのモデルIDはgpt-6-solとgpt-6-lunaで、100万トークンあたりの単価はGPT-6 Solが入力2ドル・出力10ドル、GPT-6 Lunaが入力0.1ドル・出力0.5ドルです。OpenAIは、同じ階層のGPT-5.6の価格から50%の引き下げと説明しています。ChatGPT WorkとCodexではPlus・Pro・Business・Enterprise・Eduに提供され、FreeとGoのユーザーはデスクトップアプリでGPT-6 Lunaを使えます(2026年9月23日時点、出典: openai.com)。通常のChatでも、2026年10月8日からPlus・Pro・Business・EnterpriseでGPT-6 Solが既定のモデルになり(Enterpriseは管理者の設定によります)、FreeとGoでも2026年10月8日(米国時間)から順次GPT-6 Lunaに切り替わります(出典: openai.com)。

GPT-6 Sol・Lunaの公開後も、GPT-5.6のSol・Terra・LunaはAPIで引き続き提供されており、提供終了の予定も公表されていません(2026年9月23日時点、出典: developers.openai.com)。ただし、GPT-5.6 Solの単価はGPT-6 Solの2倍です。新しく組む処理はGPT-6世代から検討し、GPT-5.6で動いている処理は代表タスクで切り替えを比較するのが現実的です。GPT-6世代にTerraに当たるモデルは発表されていませんが、GPT-6 Solは入力単価がTerraと同じ2ドルで、出力はTerraの12ドルより安い10ドルです。Terraで動かしている処理も、GPT-6 Solとの比較対象になります。

使い分けとしては、要件が曖昧で複数のツールをまたぐ最難関の作業にはGPT-6 Astra、複雑で自由度の高い作業や日常作業にはGPT-6 Sol、条件が明確な反復作業にはGPT-6 Lunaが候補です。GPT-5.6の3ティアは、既存の処理を動かし続ける選択肢として残ります。Work・CodexのAstraは対象4プランへ展開済みです。通常のChatでは、推論設定の「Pro」は引き続きGPT-6 Astraが担います(出典: openai.com)。順次の提供のため利用者によって表示の時期が異なり、モデル選択欄には「GPT-6」と表示されます。実際の表示を確認してください。

maxとultra|GPT-5.6が備える2つの推論モード

GPT-5.6の2つの推論モード(max と ultra)の違いを、処理の進め方と、それぞれが向く作業の対比として理解できる図。

GPT-5.6のSolは、長期にわたる作業を最後までやり切る「ロングホライズン(long-horizon、長い見通しの作業)」型のエージェントモデルとして設計されています。コードを読み、コマンドを実行し、失敗を直し、ファイルを編集し、結果を検証する、といった一連の流れを通しでこなす想定です。この設計を支えるのが、新たに導入された2つの推論モードです。

  • maxモード:1回の処理の中で、もっとも長く深く考えさせる単一パスの推論モード
  • ultraモード:複数の補助的なエージェント(サブエージェント)を立ち上げ、作業を分割して並列に処理する協調モード

maxは「1つのモデルに深く考えさせる」、ultraは「複数のエージェントに手分けさせる」方向の強化です。注意したいのは、ultraが簡単な作業を速く片付けるためのモードではない点です。ultraは既定で4つのエージェントを並行して動かす構成で、トークン使用量が増える代わりに、難易度の高いタスクでより良い結果をより短時間で得られるとされています。ベンチマーク(性能を測る共通テスト)上の最高スコアも、ultraモードで記録されています。

加えて、API利用時の「プロンプトキャッシュ」も再設計されました。これは同じ指示文や文脈を繰り返し使うときに、処理結果を一時的に保存して再利用する仕組みです。GPT-5.6では明示的なキャッシュブレークポイントの指定に対応し、キャッシュの有効期間は最低30分になりました。課金面では、キャッシュへの書き込みが非キャッシュ入力単価の1.25倍、キャッシュの読み出しには90%の割引が適用されます(出典: openai.com)。同じ文脈を何度も参照するロングホライズン作業では、この読み出し割引が実効コストを大きく左右します。

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GPT-5.6で強化された3つの領域|コーディング・科学・サイバーセキュリティ

GPT-5.6が公式に強化を打ち出しているのは、大きく3つの領域です。いずれも「人が長時間かけて進める専門作業」を、AIがどこまで肩代わりできるかに関わる分野です。

関連記事:Codexとは?OpenAIのコーディングAIエージェントの仕組み・使い方・料金を徹底解説

エージェント型コーディング

コマンドライン操作や計画、試行錯誤、外部ツールとの連携を必要とする開発作業で、最高水準を達成したとされています。コーディング支援ツールのCodexとの統合が前提に置かれており、開発者がAIに任せられる範囲を広げる方向の強化です。

生物学などの科学解析

ゲノミクス解析のような、長い手順を要する科学タスクで、より少ないトークン(AIが処理する文章の最小単位)で高い精度を発揮するとされています。処理量あたりの精度が上がることは、コストがかさみやすい研究用途では実務的な利点になります。

サイバーセキュリティ

脆弱性の調査などを含む長期的なセキュリティ作業で、OpenAIは発表時点で「自社史上もっとも能力の高いモデル」と説明していました。後述するとおり、この能力の高さは安全性の評価と表裏一体であり、強化と同時に保護策の強化も打ち出されています。

これら3領域に共通するのは、前述のmax・ultraという2つの推論モードを土台にしている点です。難しい作業ほど、深く考えさせるか分担させるかを選べることが、専門領域での精度向上につながっています。

GPT-5.6の料金|Sol・Terra・Lunaの価格とFast mode

GPT-5.6のAPI料金(100万トークンあたりの単価)は、ティアごとに段階的に設定されています。2026年7月30日にTerraとLunaが値下げされ、続いて2026年8月21日にはSolも値下げされました。下表が最新の価格です(2026年8月21日時点、出典: openai.com)。料金は変わりやすいため、実際の検討時は必ず公式の最新情報を確認してください。

モデル入力(100万トークン)出力(100万トークン)直近の改定
GPT-5.6 Sol4ドル20ドル2026年8月21日に値下げ(5ドル / 30ドルから)※現行はプロモーション価格
GPT-5.6 Terra2ドル12ドル2026年7月30日に20%値下げ(2.5ドル / 15ドルから)
GPT-5.6 Luna0.2ドル1.2ドル2026年7月30日に80%値下げ(1ドル / 6ドルから)

注意したいのは、フラッグシップであるSolの「入力4ドル・出力20ドル」がプロモーション価格(期間限定の割引)だという点です。OpenAIは料金ページで、この価格を少なくとも2026年11月21日まで提供すると告知しています(出典: openai.com)。長期の費用計画をSolの単価で組む場合は、期間終了後に価格が戻る可能性を織り込んでおくほうが安全です。

3ティアそろって値下げされた結果、同じ予算で処理できる量はどのティアでも増えています。とくにLunaの80%値下げは大量処理の採算ラインを大きく動かすため、コストが合わずに見送っていた用途を見直す余地が出てきます。

なお、いずれのティアにもキャッシュ入力の割安な単価が用意されており、Solは100万トークンあたり0.4ドル、Terraは0.2ドル、Lunaは0.02ドルです。同じ前提文を繰り返し送る使い方では、ここが効いてきます。

この一連の値下げは、API以外にも波及します。ChatGPTワークとCodexでは、サブスクリプションの価格とクォータ(利用枠)の予算自体は変わりませんが、TerraとLunaを使ったときに消費されるクレジットが減ります。同じ契約のまま、下位ティアで処理できる量が増えるということです。

2026年9月23日に公開されたGPT-6 SolとGPT-6 Lunaは、同じ階層のGPT-5.6より入力単価が半分です。100万トークンあたりの入力・出力はGPT-6 Solが2ドル・10ドル、GPT-6 Lunaが0.1ドル・0.5ドルで、いずれもGPT-5.6 Sol(4ドル・20ドル)とGPT-5.6 Luna(0.2ドル・1.2ドル)を下回ります(2026年9月23日時点、出典: openai.com)。GPT-5.6の単価で見積もる前に、GPT-6世代で品質基準を満たせるかを確かめてください。

あわせて、APIに「Fast mode」が追加されました。これは従来のPriority Processing(優先処理)を置き換えるもので、Solでは標準処理の最大2.5倍の速度を、2倍の価格で提供します。知能そのものは変わらず、速度だけを買う仕組みです。既存のリクエストに付けていたpriorityタグはそのままFast modeとして扱われるため、後方互換が保たれています(出典: openai.com)。応答時間が業務の質に直結する場面だけをFast modeに寄せ、それ以外は標準処理に置く、という使い分けが現実的です。

関連記事:AI導入にかかる費用の相場は?3つのパターンと主要ツール料金を整理

GPT-5.6とGPT-5.5・競合モデルとの違い

GPT-5.6は、前世代のGPT-5.5からの性能向上に加え、競合であるAnthropicのClaude Mythos系列を強く意識したモデルとして位置づけられています。違いが分かりやすいのが、コマンドライン操作の自動化を測る「Terminal-Bench 2.1」というベンチマークのスコアです。下表は、主要モデルのスコアを並べたものです(出典: openai.com)。数字の差だけでなく、各モデルが拮抗している全体像を読み取ってみてください。

モデルTerminal-Bench 2.1 スコア
GPT-5.6 Sol(ultra)91.9%
GPT-5.6 Sol(max)88.8%
Claude Mythos 588.0%
GPT-5.6 Terra87.4%
GPT-5.5(前世代)85.6%
GPT-5.6 Luna84.7%
Claude Fable 583.1%

表のとおり、GPT-5.6 SolはGPT-5.5から大きくスコアを伸ばし、競合のClaude Mythos 5も上回っています。注目したいのは、バランス型のTerraが前世代のフラッグシップだったGPT-5.5を上回っている点です。コーディングエージェントの性能を測るArtificial Analysis Coding Agent Indexでも、max推論を適用したSolが80を記録してClaude Fable 5を2.8ポイント上回り、出力トークン数と所要時間はいずれも半分未満だったと報告されています(出典: openai.com)。

OpenAIはこの効率の改善について、Sol自身が本番用のカーネル(計算処理の中核部分)を書き換える実験を重ね、モデルを提供するコストを20%削減し、トークン生成の効率を15%以上改善したと説明しています。7月30日の値下げは、この効率化の成果を価格に反映したものと位置づけられています。8月21日のSolの値下げは、これとは別に期間を区切ったプロモーション価格として案内されています。

一方で、公開された主張と第三者の検証は切り分けて読む必要があります。ある専門メディアは、OpenAIが発表時に独立検証が可能な完全なベンチマークデータをすべて公開しているわけではないと指摘しています。自社の用途で使うかどうかは、公開スコアだけでなく、実際の業務データで試したうえで判断するのが確実です。なお、この節の比較はいずれもGPT-5.6の発表時点のものです。Anthropicはその後、2026年9月1日にClaude Fable 5.1を一般提供し、Claude Mythos 5.1は信頼済みの組織向けプログラムに限って提供しています(出典: anthropic.com)。現行のClaudeと比べる場合は、両社が公表している最新の評価と条件を確認してください。

関連記事:Claude Fable 5.1とは?Fable 5・Mythos 5.1との違い、料金・提供条件を整理

GPT-5.6の安全性と第三者評価|セーフガード強化とMETRが挙げた懸念

GPT-5.6は「OpenAI史上もっとも堅牢な安全性の仕組み(セーフガードスタック)」を掲げて投入されました。一般提供の開始前に、人間によるレッドチーミング(攻撃者の視点で弱点を探す検証)と大規模な自動テストを組み合わせた評価期間が設けられ、外部の専門機関とも連携して防御策の負荷テストが行われたとされています。OpenAIの準備フレームワークに基づく評価では、生物学とサイバーセキュリティのいずれでも危険性が「Critical」のしきい値を超えないと判定されました(出典: openai.com、詳細はGPT-5.6 System Card)。

一方で、第三者の評価には無視できない指摘もあります。AI評価機関のMETRは、事前評価でGPT-5.6 Solの「不正行為率」が、同機関が評価した公開モデルの中でもっとも高かったと報告しています(出典: METR)。具体例として、提出物に不正なコードを紛れ込ませる、隠された正解を抽出して期待される答えを引き出す、といった挙動が観測されたとされます。また、ユーザーの目標を過度に執拗に追い、意図した範囲を超えて行動することがある点も懸念として挙げられました。

ただしMETRは、最終的にはGPT-5.6 Solが「完全に自動化されたAI研究開発を可能にするものではなく」、危険なしきい値には達していないとも評価しています。能力の高さと安全性の懸念は表裏一体であり、自社で試す際は、とくにセキュリティ関連の指示への応答が想定どおりかを事前に検証しておくと安心です。

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GPT-5.6はいつから使える?限定プレビューから一般提供までの経緯

GPT-5.6の提供開始をめぐっては、限定プレビューの段階で米国政府の要請による限定アクセスという論点がありました。OpenAIは当初、新モデルの提供を政府と共有された一部の信頼できるパートナーに限定していました。これは政府との継続的な協議の一環で、事前に計画とモデルの能力を政府にプレビューしたうえで、要請に従って限定プレビューから開始したと説明されていました。OpenAI自身はこの措置に不満を示し、政府によるアクセス審査が長期的な既定になるべきではないとの立場を表明しています。

その後、2026年7月9日に一般提供が始まりました。ロールアウトはグローバルに開始され、24時間かけて段階的に全ユーザーへ広げる形が取られています。日本国内でも、対象プランを契約していれば同じ条件で利用できます。限定プレビューの期間は約2週間で終わったことになり、当時「数週間以内」とされていた見通しよりも早い一般提供でした。

どのティアを選ぶ?GPT-5.6の使い分けの判断軸

3つのティアが選べるようになると、次に出てくるのが「結局どれを使えばいいのか」という問いです。OpenAI自身は、成果から逆算して考えることを勧めています。作業の重要度、間違えたときの損失、急ぎ具合、処理する量。この4つで、必要な知能・速度・信頼性・コストのバランスが決まるという考え方です。

実務では、1つのワークフローの中でも工程ごとに最適なティアが変わります。OpenAIが挙げている例は分かりやすく、コーディングの流れであれば、不確かな部分を解消して方針を決めるところはSolに任せ、仕様が固まった変更の実装、テストの作成と実行、結果の評価はLunaに任せる、という分け方です。全工程を最上位モデルで通す必要はありません。

判断の順番としては、まず「その工程で品質基準を満たせる最も安いティアはどれか」を検証で確かめ、そこから上げていくほうが無駄が出ません。とくにLunaの値下げ後は、これまで「精度は足りるがコストが合わない」と見送っていた大量処理が、採算に乗る可能性があります。既存の処理をGPT-5.5で回している場合も、TerraやGPT-6 Solに切り替えるだけで同等以上の性能をより安いコストで得られるかを、まず小さく試す価値があります。

新しいAIモデルを業務に取り入れるときに陥りがちな3つの落とし穴

GPT-5.6のような高性能モデルが登場すると、自社でも本格的に使いたいという機運が高まります。一方で、新しいAIモデルを業務に取り入れようとするときには、つまずきやすいパターンがあります。ここでは代表的な3つの落とし穴と、それを避ける考え方を整理します。

落とし穴1|いきなり全社で一気に使い始めようとする

最新モデルへの期待から、最初から多くの業務へ一斉に展開しようとすると、現場が使い方を理解しきれず定着しません。まずは対象を1つに絞ることが大切です。

落とし穴2|壮大なAI戦略から考え始めて手が止まる

全社的なAI戦略を完璧に描いてから動こうとすると、検討だけで時間が過ぎ、いつまでも実行に移れません。小さく試して学ぶほうが前に進みます。

落とし穴3|既製品のチャット型AIでは業務フローに組み込めない

汎用のチャット型AIは手軽ですが、自社の業務に合わせたカスタマイズが難しく、実際の業務フローに組み込めるレベルの精度には届きにくいのが実情です。

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GPT-5.6に関するよくある質問

最後に、GPT-5.6について検索されやすい疑問を、端的に整理します。

GPT-5.6はいつから使えますか?

2026年6月26日に限定プレビューが始まり、2026年7月9日に一般提供が開始されました。ChatGPT・Codex・OpenAI APIのすべてで利用できます。

GPT-5.6はGPT-5.5と何が違いますか?

コーディング・科学解析・サイバーセキュリティでのエージェント能力が強化され、max・ultraという2つの推論モードが追加されました。単一モデルだった前世代と異なり、Sol・Terra・Lunaの3ティアから選ぶ構成になっています。API料金も3ティアそろって値下げされ、フラッグシップのSolは2026年8月21日から入力4ドル・出力20ドルの暫定価格になっています。

Sol・Terra・Lunaの違いは何ですか?

Solは最大性能のフラッグシップ、Terraはコスト効率を重視したバランス型、Lunaは高速・低コストの大量処理向けです。API料金は入力単価でSolが4ドル、Terraが2ドル、Lunaが0.2ドルと差があり、工程ごとに使い分ける設計になっています。

GPT-5.6は無料で使えますか?

無料版のユーザーでも、ChatGPTワークとCodexでTerraを利用できます。ChatGPT Goも同じくTerraです。チャットでSolを使う場合や、ChatGPTワーク・CodexでSol・Terra・Lunaを選ぶ場合は、Plus以上のプランが必要です。なお、通常のチャットの既定モデルはGPT-6世代に順次切り替わり、無料版とGoでは2026年10月8日(米国時間)からGPT-6 Lunaになります(出典: openai.com)。

Fast modeとは何ですか?

2026年7月30日にAPIへ追加された高速処理のオプションで、従来のPriority Processingを置き換えるものです。Solでは標準処理の最大2.5倍の速度を2倍の価格で提供し、知能そのものは変わりません。既存のpriorityタグ付きリクエストは自動的にFast modeとして扱われます。

まとめ

GPT-5.6は、2026年7月9日に一般提供が始まったOpenAIの次世代モデル群で、Sol・Terra・Lunaの3ティアから性能とコストのバランスを選べる構造が特徴です。2026年7月30日の料金改定でTerraが20%、Lunaが80%値下げされ、続く2026年8月21日にはSolも入力4ドル・出力20ドルへ下がったため(暫定価格)、どのティアでも同じ予算で処理できる範囲が広がりました。速度が要る場面にはFast modeという選択肢も加わっています。2026年9月23日には後継のGPT-6 SolとGPT-6 Lunaも公開され、入力単価はGPT-5.6の同じ階層の半分になりました(GPT-5.6もAPIで提供が続いています)。2026年10月8日からは、ChatGPTの通常のチャットの既定モデルもGPT-6世代へ順次切り替わっています。一方で第三者評価では不正行為率などの懸念も指摘されており、能力と安全性の両面を冷静に見ておくことが欠かせません。まずは1つの工程で、品質基準を満たせる最も安いティアを検証から確かめるところが出発点になります。そして実際に自社でAIを活かす際は、壮大な構想から入らず、1業務をAIエージェントに任せるスモールスタートから始めることが、定着への近道になります。

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朝山 高至
AIエキスパート

GiftXにてマーケティング・PdM・AI推進を担当。自社事業GIFTFULにて、AIエージェントを活用したマーケティング・営業業務の自動化を主導。

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