作ったもの
テーマは「マルチバース」。本人が好きな7つの世界線を駆け抜け、最後に現実の本人へ戻ってくる構成です。
世界線は、サッカー日本代表、極道、サーファー、ピアニスト、お坊さん、スパイ(007)、トレイルランニングの7つ。汎用的な「かっこいい動画」ではなく、飯髙さんが好きなもの・憧れているものだけを詰め合わせた「その人だけのギフト」にしました。
制作の全体像
全体は4つのステップで進みました。
- 企画・設計:コンセプトと7世界線、絵コンテ、音の方針を1つの設計図に固める
- 静止画:各シーンのキービジュアル(始点・終点)と表紙ポスターを作り込む
- 動画生成:静止画を動かす(image-to-video)。シーンに応じてモデルを使い分ける
- 編集・仕上げ:全カットをつなぎ、Sunoで作ったオリジナル曲と各カットの環境音をのせて書き出す
ここでも、各ステップの実作業はAIエージェントが担当しています。私がやったのは、方向づけと「この出来でいいか」の判断です。
工程の詳細
STEP1 設計:ストーリーと設計図を固める
使用ツール:Claude Code(企画・絵コンテ・設計図の作成と管理)
まず、コンセプトと7つの世界線、各カットの絵コンテ、音やトランジションの方針を固めます。企画から各カットのプロンプト・音の設計まで、すべてを1つの設計図にまとめてから制作に入りました。設計が散らばっているとAIの判断もそのたびに揺れるので、1か所にまとめておくのが効きます。
7世界+表紙+着地のカット割は、1枚の絵コンテにまとめています。
STEP2 静止画から世界観を固める
使用ツール:Claude Code + GPT Image 2(gpt-image-2)(各シーンのキービジュアルと表紙ポスターを生成)
動画ではなく、静止画から作ります。各世界線について「始点」と「終点」の2枚のキービジュアルを作り込み、表紙ポスターも先に確定させました。
動画生成は、静止画を「動かす」工程です。土台の1枚が甘いと、動かした瞬間に破綻します。逆に、顔・構図・ライティングが決まった1枚があれば、動画はそこを起点に安定します。
STEP3 静止画を動かす:2つのモデルを使い分ける
使用ツール:Claude Code(MCP経由)+ Higgsfield(Seedance 2.0/Kling 3.0)
静止画を動画にする工程(image-to-video)では、2つの動画生成モデルを使い分けました。
- 激しい全身アクション(サッカーのシュート、極道のちゃぶ台返し、サーフィン、UTMBのゴール)には、大きな動きと物理表現が得意な Seedance 2.0
- 顔・演技・静の質感(ピアノ、お坊さん、スパイ、現実の本人)には、表情や繊細な動き、識別性に強い Kling 3.0
どちらも Higgsfield 上のモデルです。そしてこの Higgsfield も、Claude Code から(MCP経由で)操作しました。生成の指示出し・コストの確認・できあがりのチェックまで、Higgsfield の画面を個別に触ることなく、Claude Code への指示だけで進めています。
ほとんどのカットでは「始点の画像」と「終点の画像」の2枚を渡し、その間を補間させています。サッカーなら「シュート前の構え」から「ゴール後に背番号を見せる後ろ姿」へ。始点から終点への弧を持たせると、動きに意味が出ます。
STEP4 編集・仕上げ:つないで、割って、鳴らす
使用ツール:Claude Code(編集)+ Suno(オリジナル曲)
生成したカットを編集でつなぎます。編集も、AIエージェントがコマンドを組み立てて処理しました。
- 解像度がバラバラのカットを縦9:16(1080×1920)に揃えて連結
- トランジションは演出ごとに変える。表紙から本編は溶けるディゾルブ、世界と世界の切り替えはデジタルに裂けるグリッチ、クライマックスのUTMBから現実の本人へは温かいディゾルブ
- 音楽はSunoで作ったオリジナル曲。そこへ各カットの環境音(歓声・波・読経など)を薄く重ねてミックス
- 冒頭からポスターが映るよう頭出しを調整
ポイントは、まず「作り方」をAIに調べさせたこと
動画を作り始める前に、AIエージェントに「AI動画制作のコツと落とし穴」そのものを深く調べさせました。各動画生成モデルの特性、動画化のプロンプトの書き方、よくある破綻パターンと回避策などです。そうやって集めた知見を、設計(プロンプトの型、モデルの使い分け、各カットの秒数)に落としてから、実制作に入りました。
いきなり作るのではなく、調べてから作る。あとで触れる「動画が崩れる」問題の多くは、調べた知見で先に避けられましたし、避けきれなかった分も「なぜ崩れたか」がすぐ分かるので、手戻りが少なくて済みました。
生成AIは、放っておくと「とりあえず叩いて当たりを待つ」使い方になりがちです。AIにまず方法論を調べさせ、それを設計に反映してから作ると、同じツールでも仕上がりが変わります。AIに作らせる前に、AIに学ばせる。
質を上げるために効いた工夫
調べた知見と実制作から、再現できそうなポイントを残しておきます。
- 顔は「両端」で固定する。高解像の静止画を先に作り込んで参照にし、顔が主役のカットは始点と終点の2枚で顔を固定すると別人化しにくくなります
- プロンプトには「何が動くか」だけを書く。画像に写っている被写体や背景は、もう一度説明しません。書くのは「カメラの動き+強い動作動詞+物理(飛沫や粉塵)+ムードと光+動作の終わり方」。15〜40語くらいに収めます
- モデルを使い分ける。激しい全身アクションと、顔・演技・静の質感は、得意なモデルが違います
- ツールの制約を、先に設計へ織り込む。たとえばあるモデルは「カメラ移動の制御」と「終点画像の指定」が同時に使えません。なのでカットごとに「カメラで動かす」か「補間で動かす」かを先に決めます
- 尺は短いほど崩れにくい。単一の動作なら3〜5秒、2段階の動きでも6〜8秒に抑えます。長尺は崩れの温床です
- 縦9:16はそのまま生成し、崩れ対策を常に添える。後から切り抜かず、顔の崩れやちらつきを防ぐ指定(ネガティブプロンプト)を毎回入れます。生成が詰まったら経路を変えます
ポイントは、上のような知見を実際のプロンプトに落とすことです。たとえばサーフィンのカットは、こう書きました。
水面すれすれを、チューブの中で追走するPOV。深くクラウチして波の斜面を一気に加速。頭上では巨大なチューブが巻き込む。強く板を踏み込み、片手が水面をかすめ、しぶきがレールから弾けてレンズへ飛ぶ。透き通ったエメラルドのチューブに夕日が差し込む。鮮やかな海、シネマティック、フィルムグレイン。そのまま、まばゆい出口へ加速していく。
サーファーの見た目や服装は一切書いていません。それは始点の画像が持っているからです。書いているのは「クラウチして加速する/水しぶきが弾ける」という動きと物理、「夕日が透ける/シネマティック」という光と質感だけ。始点(波への突入)と終点(チューブ内)の2枚で補間させ、「何が動くか」に言葉を集中させています。
うまくいかなかったこと(動画が「崩れる」)
きれいに進んだ話だけではありません。とくにAI動画は崩れます。実際に踏んだものを正直に残します。
- 顔が別人になる。単一の画像から長めに動かすと、尺が伸びるほど顔がブレていきます。ピアノのカットは、生成したら完全に別人になりました。対策は前述の「始点・終点の2枚で顔を固定」でした
- 複数人が溶けて混ざる。終盤で考えていた「5人で振り返る集合カット」を生成したら、隣り合う人物が補間の途中でモーフして混ざり、ぐにゃりと溶けてしまいました。複数人が一斉に振り向く動きは特に難しいです
- 手や指、物体がゆがむ・ちらつく。細部が崩れたり、フレーム間で揺れたりします。ここは今のAI動画でも残る弱点で、構図やカット選びで避ける場面がありました
崩れの半分は事前のリサーチで避けられ、半分は作ってみて初めて分かりました。だからこそ、小さく早く作って確かめるのが効きます。1カットずつ生成して、顔・動き・破綻を確認してからOKを積み上げていきました。
まとめ
今回操作したのは、AIエージェント(Claude Code)だけです。画像も動画も編集も、各ツールの画面を個別に触ることなく、指示と判断だけで1本に仕上がりました。人間がやったのは、方向づけと良し悪しの判断、そして「作る前にAIに作り方を調べさせる」という段取りです。
GiftXが大事にしているのは、人の温かみを起点に、テクノロジーの力で体験や生産性を進化させていくことです。今回の誕生日動画は遊びの一本ですが、根っこにある考え方、つまりAIにまず学ばせ、設計を一冊にまとめ、判断に人間が集中するという進め方は、マーケティングや営業など業務のAI活用にもそのまま地続きだと思っています。今回は、そのやり方をまずは身近なところから実践してみた話でした。
GiftXは、マーケティング・営業領域のAI活用を得意としています。今回のような動画・画像のクリエイティブ制作や、記事コンテンツの制作など、「うちでもやってみたい」と思ったら、ぜひ気軽に声をかけてください。