AIで提案書を作る仕組み|商談を動かす資料は「スライド化の前」に決まる

AIで提案書を作る仕組み|商談を動かす資料は「スライド化の前」に決まる
目次

AIで営業資料を作ること自体は、もうそこまで難しくありません。難しいのは、相手企業の状況を踏まえて「なぜこの提案を採用すべきなのか」が伝わる資料に仕上げることです。

GiftXでは提案資料の作成にAIを使っています。ただし、目的は単に速く作ることではありません。相手企業の事業や課題を踏まえて、何を提案し、どこを強調するかを考えるためです。この記事では、AIを使って相手企業ごとに提案書を作り分ける流れを紹介します。

飯髙 悠太
マーケティングエキスパート

GiftX代表。ベーシック執行役員、ホットリンクCMOを経て2022年にGiftX創業。200社以上のマーケティング支援実績を持ち、AI×マーケティング領域の実践支援にも注力。著書に『BtoBマーケティングの基礎知識』『僕らはSNSでモノを買う』など、5冊のマーケティング専門書を執筆。

提案資料は、速く作るだけでは成果につながらない

提案書をAIで作って、制作が速くなったという会社は増えています。ただ、スピードを優先するあまり、中身の薄い資料になってしまうケースもあります。資料を速く出せても、提案の納得感が弱ければ、結果として受注率が下がってしまいます。

AI活用で大事なのは、作業時間を減らすことだけでなく、成果につなげることです。営業資料であれば、速く作ること以上に商談を動かす提案に仕上げることが重要です。

本来、一社ごとに提案を作り分けるには、調査、仮説づくり、構成の見直しにかなりの時間がかかります。その手間をAIを使って毎回やり切れる形にすることで、効率化と提案の質を両立しやすくなります。

提案の質は、スライド化の前で決まる

提案資料は、いきなりスライドから作りません。調査、方向性、骨子設計、スライド化の順に進めます。

大事なのは、いきなり見た目を作らず、「この会社には何を提案するべきか」を先に決めることです。クライアントを調べ、提案の方向を決め、構成を組んでから、最後にスライドにします。調査と仮説が曖昧なままデザインに入らないようにしています。

提案資料を作る流れを示した図。調査・方向性の決定・骨子設計を経て、最後にスライド化する順序を表している。

商談を動かす提案書を作る流れ

① まず、相手企業について調べる

最初の工程では、その会社を複数の観点でWeb調査します。事業の中身、マーケティングや営業の状況、最新の動向、競合のなかでの立ち位置などを、出典を残しながら押さえます。

ここで相手企業の状況を押さえておくと、提案書の内容がその会社の現状や課題から大きく外れにくくなります。調べずに書いた提案は、どこの会社にも当てはまる一般論になりがちです。

② 提案の論点と方向性を固める

次に、骨子を作る前に提案の方向性を整理します。ここで決めるのは、相手企業に対して何を重点的に提案するか、どの課題から入るか、今回どこまでを提案範囲にするかです。

この段階で方向性を決めておくと、後の骨子やスライドもその方針から逆算できます。逆に、何を重点的に提案するかが曖昧なまま構成に入ると、資料全体の軸がぶれ、後で大きく作り直すことになります。

③ 提案の流れと詳細骨子を組み立てる

方向性が固まったら、それをもとに提案全体の流れを組み立てます。どの順番で話すと相手に納得してもらいやすいか、どこで課題を整理し、どこで解決策を示し、どこで自社の支援内容を伝えるかを決めていきます。

ここでは、決まった型のスライドをそのまま当てはめず、提案の論点に合わせて必要な要素を分割・統合・並べ替えます。あるスライドでは一般的な進め方を説明し、別のスライドでは相手企業側のメリットを示し、最後に自社が支援できる範囲を伝える。そうした流れを、詳細な骨子として整理します。

この骨子があることで、スライド化の段階では「何を書くか」ではなく、「どう見せるか」に集中できます。

④ 最後に、見せ方としてスライドに落とす

最後に、固めた骨子をFigma上のスライドへ展開します。内容に応じて複数のレイアウトから選び、同じ形式が続く単調さを避けます。骨子の段階で何を伝えるかが決まっているため、スライド化では主に見せ方を調整します。

これらの流れは、Claude Codeを使って一連のワークフローとして実行しています。調査、方向性の整理、骨子生成、Figmaへの反映までを、都度ツールを開き直さずに進められるようにしています。

弊社ではFigmaを使っていますが、資料化のツールはFigmaに限りません。PowerPointやGoogleスライド、その他のツールでも同じ考え方は応用できます。大事なのは、ツールそのものよりも、スライド化の前に提案の軸と骨子を固めておくことです。

AIに任せる作業と、人が見るところ

提案の方向性を固め、ストーリーを組み立てる。この2つは、相手企業の課題や商談の状況を踏まえないと判断しづらい部分です。たとえば、どの課題から提案するか、どこまで踏み込むかは、その業界やその会社の温度感を踏まえないと判断できません。ここをAIに丸投げすると、見た目は整っていても、相手から見れば自社向けに考えられていない一般論の資料になりがちです。

そこで、AIがたたき台を出し、人が「この会社にとって本当に重要か」「提案で刺さる内容か」を確認しながら直しています。調査や骨子づくり、Figmaへの反映などの作業はAIに任せますが、何を伝えるべきか、どこまで踏み込むべきかは人が判断します。

作り分けても、出来にムラを出さない

相手企業ごとに資料を作り分けるほど、提案の深さや表現、見た目にばらつきが出やすくなります。個別に作っても一定の質を保てるように、確認の工程を3つに分けています。

作るAIと、チェックするAIを分ける

提案の骨子やスライドは、書いたAIとは別のAIが評価します。別の評価プロンプトで、必要なスライドが抜けていないか、スライド間で内容が重複・矛盾していないか、1枚のスライドに要素を詰め込みすぎていないかなどを見て、致命的な問題、必須の修正、推奨の改善に分けて指摘します。

書き手が自分の成果物を自分で評価すると、どうしても甘くなります。役割を分けることで、その会社向けに作り込んだ提案でも、一定の基準で、資料の抜け漏れや粗さを確認できます。

自動チェックでは拾えない違和感を、人が見る

ドラフト作成後に、全スライドをAIで機械的に点検します。見出しの文字サイズ、文字の重なり、表のセルの欠け、濃い背景での文字色などを一通り確認し、中身が薄すぎるスライドも検出します。

そのうえで、最後は人が目で見て判断します。ここで見るのは、体裁の正しさではなく、この提案が相手企業の関心を動かし、商談を前に進められる中身になっているかです。論点がその会社の課題とずれていないか、結局この資料で何を伝え、何を依頼したいのかが伝わるか。機械では測れないこの部分を確かめて、このまま進めるか、具体的に直すか、構成から組み直すかを決めます。

見た目は、共通ルールから外さない

相手企業ごとに中身は変えても、見た目のブランドは崩しません。色・フォント・余白・あしらいのルールは「DESIGN.md」という1つの基準ファイルにまとめてあり、AIはここで定義したスタイル以外は使いません。フッターの表記やタイトルの大きさといった細部まで、誰がどの案件で作っても揃うようにしています。

毎回使う共通部品はテンプレート集から再利用し、ゼロから描き直しません。中身は相手企業ごとに変え、見た目はブランドのルールに合わせる。この両立で、似たような資料ばかりになることと、作り分けて見た目が崩れることの両方を防いでいます。

最初からうまくいったわけではない

最初からうまくいったわけではありません。特に課題になったのは、AIに任せると見た目は整っているのに提案の中身が浅くなりやすいことでした。配色やレイアウトが整った”それっぽい”資料はすぐに作れます。ただ、提案の軸が弱いままだと、どの会社にも当てはまる一般論に見えてしまいます。

そこで、最初からスライドを作らず、先に方向性と骨子を固め、「この会社に何を提案するか」を決めてから資料化する流れに変えました。評価の段階でも、見た目だけでなく、提案の論点が相手企業に合っているかを必ず確認するようにしています。

見た目の面でもつまずきました。最初は、どの提案でも同じようなカード型のスライドが続き、単調になりがちでした。そこで、複数のレイアウトから選び、隣り合うスライドで同じ型を続けないようにしています。

一方で、相手企業ごとに変えようとしすぎると、今度はフォントや余白、見出しの作り方がばらつき、全体の統一感が落ちました。そのため、変える部分と共通で守る部分を分け、評価の仕組みとデザインの基準で確認するようにしています。

レビューで見つけた課題を、次の提案書づくりに反映する

提案書の質が安定し始めたのは、レビューで見つかった粗い部分を、その場で直して終わりにしなくなってからです。出てきた指摘は、チェックの基準やAIへの指示そのものに書き戻していきます。

提案を1件仕上げるたびに「うまくいかなかった点・直した点」を振り返り、その学びを手順(スキル)に書き戻す作業自体を、フローに組み込んでいます。スキルそのものも、設計・実装・検証・実行シミュレーションの段階を踏んで直し、その場で直しきれない課題は改善メモに残して次に回します。改善が個人の心がけ任せにならず、必ず次の提案に反映されるようにするためです。

こうした改善をAIへの指示やチェック基準に反映していくと、案件を重ねるほど、次のたたき台の精度が上がっていきます。

同じ考え方は、MTG資料や記事にも使える

この作り方は、提案資料だけのものではありません。商談用のMTG資料でも、いきなりスライドを作るのではなく、まず相手企業の状況を調べ、何を話すべきかを決めてから骨子を組みます。

記事制作でも同じです。いきなり本文を書き始めるのではなく、誰に何を伝える記事なのか、どの情報を入れるべきかを先に整理してから書き始めます。

提案資料、MTG資料、記事制作で扱う内容は違います。ただ、先に調べて、方向を決め、骨子にしてから形にするという順番は共通しています。この順番を決めておくと、毎回ゼロから悩まずに進めやすくなります。

AIで空いた時間を、顧客を考える時間に使う

効率化は入り口です。AIで削減できた時間を、「どうすれば顧客へ貢献できるか」「そのために何を提案すべきか」を考える時間に回す。そこが一番の狙いです。

これまで手間がかかっていた個別提案も、AIを使えば毎回やり切れる形に近づけられます。手を動かす部分はAIに任せながら、何を提案するか、どこまで踏み込むかは人が判断します。

AIは作業を速くしますが、商談を動かすのはあくまで提案の中身と営業パーソンです。手が空いた分、その中身を磨くことに時間を使う。そのためにAIを使っています。

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